私がベーシックなエクササイズばかりやる理由(ワケ)

いよいよ3月になりました。長いようで短いオフシーズンが終わり、そろそろレースが始まる季節です。本格的なシーズンインに向けてトレーニングも激しさを増していると思います。その中で皆さん、筋トレを継続されてますか?

教科書通りに行けばトレーニングを始めた頃は低負荷・高回数で行い。徐々に負荷を増しその分回数を減らす。シーズン間近やシーズン中は爆発的なエクササイズを!ってことで飛んだり跳ねたりするプライオメトリクストレーニングや、クリーンといったクイックリフトと呼ばれるエクササイズを行っていらっしゃる方もいるかもしれません。

 

ちなみに、プライオメトリクストレーニングというのはこんな感じのエクササイズです。動画はデプスジャンプという種目です。

 

どのポジションでウェイトを持ち上げるかで名称が変わりますがクリーンとはこういうエクササイズです。

 

どちらも優れたエクササイズだと思いますし、研究でも有効性が証明されています。しかし、有効だからと言って取り入れるかはまた別の問題です。

特定の競技を行っている選手が練習では鍛えられない部分を補うために筋トレという手段を用いているのならば、こういったエクササイズを余り行わず通年ベーシックなエクササイズを中心に組みます。

正直に申し上げて、かなり地味で代り映えがしません。やる方は楽しくないかもしれませんが、なぜそういったプログラムデザインをするのか、その理由について述べてみたいと思います。

 

・予期せぬリスクを減らしたい

プライオメトリクストレーニングを実施すると飛んだり跳ねたりします。場合によっては上記の動画のように高い所から飛び降りたりします。余り考慮されませんが、この着地がネックになります。

ランをするだけでも体重の4~5倍の負荷が膝に掛かると言われています。高い所から飛び降りればさらに強い負荷が掛かります。それに耐えるだけの筋力と技術があれば良いですが、それらを有していなければ怪我のリスクが増します。

ちなみに、NSCAでは自体重の1.5倍以上のウェイトを担いでスクワットを実施出来ることがプライオメトリクスを行う基準です。この基準を満たす自転車選手はほぼいないのではないでしょうか。

ただでさえ競技練習中に怪我をするリスクを負っているのに、補助トレーニングのためにリスクを上乗せするのは良い考えと思いません。筋トレを実施する際は、出来る限りコントロールされた動きで予期せぬリスクを減らす事が重要だと考えています。

 

・対象となる筋群に刺激を入れる方が優先順位高い

爆発的なエクササイズは全力で行うことが大切です。全力を出す場合、自身にとって安全かどうか、適切かどうかを横に置いておいて持ち合わせている全てを使って目的を達成しようとします。つまり、本来ならば使いたくない部位も動員してウェイトを持ち上げるという目的を達成しようとします。

そうなると、そもそも足りない部分を補うためにウェイトを持ち上げるという手段を選んだはずなのに、ウェイトを持ち上げること自体が目的化してしまいます。それよりも対象となる部位(例えば臀筋)をしっかり意識して、そこに負荷を掛ける方が高い優先順位を有していると考えております。

なお、エクササイズ中の意識の仕方がパフォーマンスに影響を与えることについては過去記事をご参考ください。

意識の仕方一つでスプリントが向上するというお話し

 

・技術の習得に時間が掛かる

プライオメトリクスは着地の技術を習得しなければなりませんし、クイックリフトは様々なエクササイズの複合で難易度の高いエクササイズです。それらをクリアするための技術を習得するのに当然時間が掛かります。

つまり、目的とするトレーニングを出来るようになるためのトレーニングに相応の時間を必要とします。競技練習に時間を割かなければならない状況下でこの時間を捻出できるのか。そもそも捻出する必要があるのか考慮するべきです。

種目数を減らせば技術習得の手間を減らせます。筋力アップ・爆発的パワーの養成には最良と言えなくとも、そこそこのコストである程度のメリットがあるならばそちらを選択するのは合理的な判断だと考えております。

オフシーズンならば新しいエクササイズに挑戦するのも良いと思いますが、シーズン中に1から始めるのは避けた方が良いと思われます。

また、筋力の小さい被験者においては「低フォース・高速度」のトレーニングよりも、「高フォース・低速度」のトレーニングの方がより幅広い負荷で爆発的筋力を向上させるというBazylerの報告もあります。持久系スポーツの選手は総じて筋力不足です。ベーシックなエクササイズを高負荷で行えば十分爆発的な筋力も鍛えられると考えています。

 

まとめ

予期しないリスクを回避し、対象となる筋群を鍛え、競技練習の時間を確保するために、ある競技の補助として筋トレを実施する選手には複雑なエクササイズを余り行いません。ベーシックな種目を中心に種目数も少なくして通年スケジュールを組みます。

筋力アップという点だけを考えれば最高とは言えないかもしれませんが、総合的な視点を持てば合理的な判断の一つと考えております。それに、ベーシックなものを完璧に習得してから難易度の高いエクササイズに移行しても遅くはありません。

編集後記

勿論、しかるべき施設で適切な指導を受けられて相応の時間を掛ける覚悟があれば良いと思います。ただ、クイックリフトを行える施設はほとんど無いのでお気を付けください・・・

 

参考文献

Bazyler D

Strength Training for Endurance Athletes: Theory to Practice

Strength & Conditioning Journal: April 2015 – Volume 37 – Issue 2 – p 1–12

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