ブログを移転した記念という訳ではありませんが、挨拶がてら1本したためました。
本日のお題目は「高強度」とは何ぞやです。高強度の定義について過去のブログにおいて下記の通り記載しております。
高強度インターバルトレーニング(High-Intensity Interval Training=HIIT or HIT)とは、研究の世界ではVO2max90%以上の強度でのトレーニングを休憩を挟みながら繰り返す事を意味します。
シーズンインに向けて準備はお済みですか?~高強度インターバルトレーニングのイロハ~
本日はその理論的背景について触れてみたいと思います。
VO2maxを向上させるのに効率の良い強度とは?
1986年と古い研究になりますがWengerの図をご覧ください。
横軸がVO2maxのパーセンテージで強度を意味します。そして、縦軸が効果量です。
ご覧の通り基本的に強度が高くなるほど効果も高くなります。そして、90-100%VO2maxの時に最大化し、それ以上になると若干下がります。
ここから読み取れるのは、低強度であろうとVO2maxを超えるような高強度でもVO2maxの向上をもたらすであろうということ。そして、強度は高くした方が良さそうだが、高くすればしただけ良いという訳でも無く、90-100%VO2maxくらいが適していそうだということです。
こういった背景があり、VO2maxを向上させたいのであればVO2maxかそれに近い強度(90-100%VO2max)でのトレーニングをなるべく沢山行いたい。
ただし、一定ペースで走る場合VO2maxに近い強度を長時間維持するのは困難です。少しでも長い時間行うために、途中で休憩を挟むインターバル形式を取り入れようというのが高強度インターバルトレーニングの理論的背景となります。
そもそもなぜVO2maxが重要なのか?
ここでお話しすることはセミナーで聞いた話であり、論文未発表なので資料をお見せすることは出来ないのですが、VO2maxとVO2max時の走速度は正の相関関係にあります。
これは生み出せるエネルギーが大きくなればなるほど筋肉は強い力を発揮できる。従って、速く走れるという単純なお話です。
併せて、VO2maxとLT時の走速度も正の相関関係にあるそうです。つまり、VO2maxという上限が上がれば中~高強度で維持できる速度も向上すると考えられます。
持久的スポーツはスタート地点からゴール地点までの速さを競う種目です。速く走ろうと思ったらVO2maxは高ければ高いほど有利である。従って、持久的スポーツにおいてVO2maxは大事な指標であると言える訳です。
本当に90-100%VO2maxが最適なの?
ここまで書いて来てなるほどそうだなと思う方もいらっしゃれば、逆にそんなこと言えないでしょという方もいらっしゃると思います。
よく勉強されている方であれば、ショートインターバルやスプリントインターバルといったより高い強度のトレーニングの有効性をご存知だと思います。
実際、私も過去のブログで1分未満と言ったショートインターバルの方が有効な場面があると述べております。
そこで考えていただきたいのはその研究の背景であったり目的です。
例えば、上記のブログだと平均VO2max73.4ml/kg/minという非常に高いレベルの競技者が対象です。そのレベルだと有酸素能力は限界まで鍛えられているはずと予想される。相対的に鍛えられていないアネロビックを刺激したことが良い結果をもたらしたのかもしれないといった具合に様々な仮説を建てられます。
不特定多数を対象とした一般論と、ある特定の個人や集団では背景が異なります。そこを考慮すれば矛盾するように見えることも十分両立する余地が御座います。
その辺りを考量して判断していただければと思います。
まとめ
・VO2maxを向上させるには適した強度がありそうである。
・一般的には90-100%VO2maxが適していると思われる。
・VO2maxが高ければ高いほど維持できる速度は向上すると考えられる。
・矛盾する報告はあるが背景を考慮すれば両立する。自分にとって最適な方法は別途考えなければならない。
つらつらと記載してきましたが上記のようにまとめております。
持久的スポーツにおいて重要な指標であるVO2maxを向上させるにはどういった強度が有効なのか。その理論的背景は何なのか。それを踏まえたうえで自分はどうするべきなのかについて、これが唯一の解という明確なものは残念ながら出せません。
しかしながら、過去の歴史を踏まえればおおよその当たりはつけられるかと思います。あてずっぽうでやるよりはずっとマシです。今回のブログが答えを出すのに役立てば幸いです。
参考文献
Wenger H
The interactions of intensity, frequency and duration of exercise training in altering cardiorespiratory fitness
Sports Med. 1986 Sep-Oct;3(5):346-56.