パフォーマンスが上がるというデータがあるから休むべき時は積極的に休むという選択

トレーニング

自転車仲間と話していても感じますし、実際にコーチングを受け持つようになって痛感するのですが持久系スポーツの選手は休むのが苦手だなと感じます。

休む=怠けている=弱くなる

というような強迫観念でも持っているのかなと思うほどです。かく言う私もレースに出ていた時は似たようなものだったので余り偉そうな事は言えませんが・・・

しかし、皆さんご存知のように人間の体は回復している時に強くなります。前振りが長くなりましたが本日のテーマはレストについてです。

恐らく熱心な持久系アスリートならば3週ON、1週OFFといったサイクルを何処かで聞いた事があるのではないでしょうか。このOFFを入れる理由について学術論文を基に掘り下げて行きたいと思います。
まずはこの論文です。

論文

・Effect of tapering period on plasma hormone concentrations, mood state, and performance of elite male cyclists

概要

・男性のエリートサイクリスト24名を対象とした研究。

・8週間の高強度トレーニングを行った後に、1~3週間のテーパリングを行った群と、そのまま高強度のトレーニングを行った群とを比較した。

・テストステロン、コルチゾール、テストステロン/コルチゾール比、気分(POMS利用)について調査した。

結果

・1~3週間テーパリングを行った群の方が全てプラスの値を示し、40㎞のタイムトライアルでもコントロール群に対して有意にタイムの短縮がもたらされた。

ポイント

・練習を続けた群よりも、テーパリングを入れた群の方がストレスを表すマーカー及びパフォーマンスが上がっている点です。

次に、こちらのレビュー論文もご覧ください。

論文

・Effects of Tapering on Performance: A Meta-Analysis
こちらはテーパリングに対するメタ分析を行った論文です。

結果

・テーパリング期間は8~14日

・トレーニング量は41~60%に低減する。

・強度は維持する。

・頻度は余り変えない。

というやり方が最もパフォーマンスを発揮しているようです。
詳しくは次の図をご覧ください。

レストまたはテーパリング期間を設ける場合は練習量を41~60%程度に抑える。
しかし、レスト週といえども普段通り高い強度の練習を実施する。
ただし、余りに高い強度の練習は逆効果の可能性があるので注意が必要。

ここからは個人的な見解です。8~14日間テーパリングの期間を設けるのが良いそうですが、スケジュール的には7日間の方が切りが良く強化とレストのバランスが良いのではと考えています。

参考例として、サイクリストトレーニングバイブルで著名なJoe Friel氏はブログで下記のように述べています。

It’s also important to mention here that an R&R “week” doesn’t mean it has to be 7 days long. In fact, it may only be 3 to 5 days of reduced training load as 7 are seldom necessary, I’ve found.

レスト週といっても7日間休まなければならない訳ではありません。実際の所7日必要な場合は滅多になく、3~5日トレーニングの負荷を減らしただけで十分な場合もあるでしょう。

必ずしもガイドラインを守らなければならないという訳では無いと解釈できます。

従って、8~14日という目安はあれども7日間で区切り3週ON/1週OFFの4週間サイクルにする。基本的にはこれに倣いながらトレーニングを積み上げて行き、重要なレースの前には8~14日間かけてしっかりと疲労を抜くのが良いのではと考えています。

しかし、全ての人がその通りに行うのがベストとは言えません。

練習量が少なくてそもそもレストやテーパリングの必要性が無い方もいらっしゃるでしょうし、仕事やプライベートのストレスが大きくもっと休まないと体力と気力を維持できない方もいらっしゃるでしょう。

体験談をお話しすると、私がレースに出ていた時は3週ONだと3週目にはヘロヘロになり全く走れませんでした。単純に回復力が足りなかったのか、トレーニングの負荷が多かったのか、仕事のようなトレーニング以外のストレスの問題なのか原因は分かりません。

原因は不明にせよどう対処したかというと、16日間ON/5日間OFFの3週サイクルでトレーニングを行っておりました。こうすると3:1というトレーニングとレストの割合をほとんど変えずに1週間サイクルを短く出来ます。私にとってはこれくらいが良かった訳です。

拙ブログをご覧の方はお分かりでしょうが、私は学術論文を中心とした科学的知見を基にトレーニングを考えております。しかし、教科書や研究のガイドラインがピッタリ当て嵌まる事などまずありません。

3週ON/1週OFFのある部分を変えたらどういったメリット・デメリットが予想されるのか。なぜこういう考え方が生まれたのかという理屈や仕組みを理解したうえで、個人に合わせてカスタマイズする作業が絶対に必要になります。

教科書や研究のガイドラインは判断する材料になりますし、知っておいて損をする事はありません。しかし、ただ知っているだけではほとんど役に立ちません。なぜそうなるのかを理解し適切な判断をする事が重要です。

参考文献

Zehsaz F

Effect of tapering period on plasma hormone concentrations, mood state, and performance of elite male cyclists

European Journal of Sport Science,11,183-190.

Bosquet L

Effects of Tapering on Performance: A Meta-Analysis

Med Sci Sports Exerc.2007 Aug;39(8):1358-65

参考ブログ

Joe Friel’s blog

How Important Is Training Volume? - Joe Friel
Last week I received an email from an athlete who was concerned about her training for the coming year. She had wisely d...
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