HIITは連日行った方が良いという例外もある~Block Periodization~

トレーニング

前回のポストでは、グリコーゲンの回復速度が筋線維によって異なり回復に時間が掛かるので、速筋繊維をより多く動員するような練習は間を空けた方が無難であるというお話をしました。教科書を紐解いても、高強度の練習は48時間くらい間を空けましょうと推奨されております。

間を空けましょうと言った舌の根も乾かぬうちに、HIITを連続でやった方が良い例外もあるというお話を今回はいたします。

その根拠となるのは、前回言葉だけ記したBlock Periodizationというやり方です。週に2~3回HIITを行うという伝統的なやり方に対して、3~5回まとめて行う週と1回のみ行う週を繰り返すBlock Periodizationの方が、トータルのセッション数が同じでもVO2maxを向上させたという研究をご紹介いたします。

合宿等で体を苛め抜いた後にパフォーマンスの向上を感じた経験を持つ方は少なからずいらっしゃると思います。それに対する一つの答えになると思います。

 

概要

・よく訓練された21名の男性サイクリスト(62±2mL/kg/min)。そのうち2名が体調不良により研究から脱落し合計19名が対象。

・1週目にHIITを5回。残りの3週間は週に1回ずつ行うグループをBP(Block Periodization)群。平均的に週2回HIITを行うグループをTRAD(Traditional)群と2つに分けた。

・4週間に渡りトレーニングを行い、HIITの総セッション数およびトレーニング時間は同じにした。

・トレーニングの負荷は下記の3つに分類した。
ZONE1(HRmax60-82%)、ZONE2(HRmax83-87%)、ZONE3(HRmax88-100%)

そしてHIITセッションとはZONE3を5×6分、または6×5分を指す。

  

結果

・VO2max、MAP、血中乳酸濃度2mmol時のパワーにおいて、TRAD群に対しBP群が有意に向上した。

補足

この研究は4週間という短い期間ですが、同じ研究グループが上記の4週間を3回繰り返し12週間に渡る実験を行いました。そして、VO2max(8.8±5.9%対3.7±2.9%)・血中乳酸濃度2mmol時のパワー(22±14%対10±7%)において、TRAD群に比べてBP群の方が 向上したという同様の結果を追加報告しております。※文献2を参照

 

私見

ボリュームは変わらないけれどもHIITをまとめて行い、オーバーリーチングと呼ばれる状態を積極的に作り出すことで大きなパフォーマンスの向上が見られたのかなと思われます。

そして、4週間という短期間だけではなく、12週間という中程度の期間においても有効であると示唆されております。能力の向上には有効な手段と考えられます。

 

Block Periodizationを用いるメリットとしては、
・伝統的なアプローチよりもパフォーマンスの向上が期待できる。
・HIITの頻度が少ない時には他の事に集中できる(スキル練習やLIT等)。

 

デメリットとしては、
・HIITの頻度が多い時には疲労が蓄積し、悪コンディションでのレースや練習を強いられる。
・相対的に障害リスクの向上。

あたりが考えられます。ハイリスク・ハイリターンなやり方と言えそうです。

 

実際問題として、クライアントの方にBlock Periodizationに基づいたスケジュールを組むことは余程の事が無ければありません。リスクが高すぎてお勧め出来ないというのが正直な所です。

しかし、この考え方を応用できる場面はしばしばあります。例えば、ゴールデンウィークやお盆休みといったまとまった時間を取れる際にチーム練習や合宿がある場合。プロやハイレベルのアマであればステージレースに出場する場合等です。

上記のように否応なく高い強度で連日走らなければならない場合はBlock Periodizationを行う機会と捉え、前後のトレーニングを調整して挑むと良いでしょう。

科学は答えを教えてはくれません。しかし、考え方や判断基準は示してくれます。基本を踏まえたうえで例外を知っておくと様々な状況に対応出来ます。その時に適切だと考えられるやり方はあってもこれが正解というやり方はありませんので、状況に応じて臨機応変に対応しましょう。

 

編集後記

実は実験としてボランティアの方に処方したことはあります。その時は成功したのですが、死にそうというコメントが連日送られて来ました。自分の身で試してみたい方は覚悟を持って挑んでください!

 

参考文献

Rønnestad BR

Block periodization of high-intensity aerobic intervals provides superior training effects in trained cyclists.

Scand J Med Sci Sports.2014 Feb;24(1):34-42

 

Rønnestad BR

Effects of 12 weeks of block periodization on performance and performance indices in well-trained cyclists.

Scad J Med Sci Sports.2014 Apr;24(2):327-35

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