ハードにトレーニングをすると怪我を予防できる?

3月も半ばになり、そろそろシーズンインしている方も多いのではないでしょうか。ここのところコーチングを受け持っている方のどなたかはレースに出場されています。このブログをご覧の皆様もそろそろといった所ではないでしょうか。

さて、生活の掛かっているプロは勿論、普段の生活がある市民ライダーがレースを楽しむには怪我をしないことが重要です。今回は怪我のリスクを抑えるためにどうするべきかを下記の論文を基に考察したいと思います。

 

論文

High chronic training loads and exposure to bouts of maximal velocity running reduce injury risk in elite Gaelic football.

 

概要

・あるサッカーチーム37名に対して、トレーニングとゲーム、怪我のリスクの関係性を調査した。
・調査項目は負荷(RPEと持続時間、GPSを使用)、最大走速度の距離、最大走速度に対する割合、最大走速度に達するトレーニングを何回行ったかを集計した。

 

結果

・トレーニング負荷が多い群に比べて、低い群は怪我のリスクが上がる。

・≦85%最大走速度を基準(1.00)とした場合、≧95%でトレーニングしていると最も怪我のリスクが低い(0.12)
下図参照

・最大走速度に達するトレーニングの回数が4週間で10-15回だと他に比べて怪我のリスクが低い(0.22)
・しかし、それよりも回数が多いと怪我のリスクが上がる。
下図参照

・最大走速度に達している距離が長くなればなるほど(120-150m)、トレーニング負荷が低い群の怪我のリスクが上がる(0.26に対し3.12)
下図参照

 

私見

観察研究に過ぎず因果関係は分かりませんが興味深い内容です。基本的にはハードにトレーニングをするとシーズン中の怪我を予防出来ると示唆されています。

練習内容も重要で、より全力に近い(試合で要求される)速度で走る方が有効のようです。しかし、単純に全力で走る回数を増やせば良いかと言えばそうではなく、ある一定の上限を超えると怪我のリスクを上げてしまいます。

また、低い負荷でしかトレーニングをしていない選手が急激に高い強度でトレーニングを行うと、怪我のリスクが跳ね上がることも示唆されています。従って、高い強度でトレーニングを行うには相応の準備期間が必要と言えそうです。

 

まとめ

ボディコンタクトのあるサッカーの研究であり、持久系スポーツにそのまま当てはめられるものではありません。しかし、スプリントやダッシュを繰り返した結果として肉離れを起こすことはままあります。そして、高い強度で走る必要のあるレースに出場するならば、トレーニング量だけではなく内容も重要とは言えると思います。それは、ただ長い時間走り込むのでは無くレースに則した高い強度でのトレーニングが必要です。

高い強度でトレーニングを実施するにはしかるべき段階を踏む必要があります。安全にレースを楽しみたいのであれば、出場するレースから逆算してトレーニングの計画を練りましょう。

具体的には、週ごとの各パワーゾーンの割合や時間を見ておくことをお勧めします。同じトレーニング時間・KJ・TSSでもVO2max、Anaerobicの割合が低いままならば要注意です。レースに出場する予定があるのならば、きちんと準備できているか記録を振り返ってみましょう。

もし、まだ準備が出来ていなければ今からでも遅くはありませんので段階を踏んで強度を上げて行きましょう。シーズンの始めや怪我明けでまだ体が仕上がっていないのならばスキップして次に備えるのも賢明な判断だと思います。

トレーニングレースだからといって準備をせずにレースに出場される方を稀に見かけますが、取り返しの付かないことにならないようにしかるべき事をして挑むことをお勧めいたします。

 

参考文献

Marone S

High chronic training loads and exposure to bouts of maximal velocity running reduce injury risk in elite Gaelic football.

J Sci Med Sport.2017 Mar;20(3):250-254. doi: 10.1016/j.jsams.2016.08.005. Epub 2016 Aug 10.

タイトルとURLをコピーしました