数値やデータを出しているからといって鵜呑みにするのはやめましょう。

 

久方ぶりのブログ更新です。

さて、私は科学的知見を基に指導するのをモットーとしています。科学的知見と言うと、被験者を選定し、実験を課し、得られた数値やデータを示します。同じ条件で平均値を出すので、個人的な体験談に比べれば信頼性が高いと言えます。

しかし、数値やデータを示しているからといって=正しい or 適切という訳ではないので注意が必要です。むしろ、数値やデータを示すことで誤魔化そうとする場合も沢山あります。

例えば、夜寝る前にプロテインや糖質を摂取すると筋量や筋力を増大させるから有効だという下記の論文があります。これを参考事例にしてお話ししてみたいと思います。

 

論文

Protein Ingestion before Sleep Increases Muscle Mass and Strength Gains during Prolonged Resistance-Type Exercise Training in Healthy Young Men

Protein Ingestion before Sleep Increases Muscle Mass and Strength Gains during Prolonged Resistance-Type Exercise Training in Healthy Young Men - PubMed
Protein ingestion before sleep represents an effective dietary strategy to augment muscle mass and strength gains during...

 

概要

・44人の被験者を22人ずつのグループに分け、12週間のレジスタンストレーニングを課した。

・一方には27.5gのタンパク質、15gの糖質、0.1gの脂質をサプリメントとして毎晩摂取させた。もう一方は0カロリーのプラセボを摂取させた。

 

結果

・プラセボ群に比べて、有意に筋量・筋力共に向上した。

・従って、寝る前のタンパク質摂取は筋量・筋力を増大させるのに有効な食事戦略である。

と言っています。数値を見れば確かに向上しているので信じてしまう方がいらっしゃるかもしれませんが、この実験だけで「寝る前のタンパク質摂取は筋量・筋力を増大させるのに有効な食事戦略である」なんてことは言えません。

なぜならば、プラセボ群はタンパク質も糖質も摂取していないので、タンパク質や糖質の量が一緒ならば結果が異なる可能性が十分あります。

就寝前のタンパク質摂取が有効であると言いたいならば、少なくともカロリー・タンパク質・糖質・脂質の合計摂取量を同じにして、摂取するタイミングだけを変える。そのうえで就寝前に摂取した群の方が有意に筋量・筋力共に向上したというデータを示す必要があります。

もっと厳密にやりたいのならば、食間の長さもコントロールする。他にも摂取するタンパク質や炭水化物の種類もコントロールする必要があります。
(例)動物性タンパク質と植物性タンパク質。単糖類と多糖類等々

この研究で言えるとすれば、タンパク質や炭水化物の摂取量を増やすのはレジスタンストレーニングの効果を増すのに有効であるという程度のものです。

査読を受けて、メソッドを公開しなければならない学術論文でさえもこういうレベルのものが多数存在します。検証も批判も存在しない雑誌やネットの情報はさらなりです。

 

参考までに、Aというやり方が有効であると言いたいならば、

1、普段の生活(トレーニング)に何もしなかったグループと、Aを追加したグループを作り比較する。

こうすれば、Aが何かしらの影響を及ぼすことが証明されます。しかし、これだけでは不十分です。他の選択肢の方が有効な可能性があります。

 

2、何もしなかったグループと、Aを追加したグループと、Bを追加したグループの3つで比較する。

こういった具合に、何もしなかったグループとBを追加したグループと比較して、Aの方が有効と証明されれば少なくともこの3種目の中ではAが最も優れていると言えます。ここまで来てようやく他に比べてAが有効と言えます。

 

さらに言えば、そもそも不適切な条件(とてもこなせないような量、被験者のレベルが違う等々)での実験は駄目とかありますが、取り合えず上記の1と2くらいは頭に入れておくと良いと思います。

このメソッドには〇〇の効果がある!という謳い文句をよく見かけます。お手軽な方法に飛びつきたくなるのは分かりますが、本当にそうなの?と批判的精神を持って読み解く能力が受け手側に求められると言ってよいでしょう。このポストが適・不適を見分けるきっかけになることを願っております。

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