自転車選手は冬作られる!その④~パフォーマンスの低下はどこまで許されるか~

オフシーズンのトレーニングについて

先日X(旧ツイッター)でオフシーズンのトレーニングについてポストいたしました。その際、過去のブログを再掲しました。本日はそれの第四弾です。ご存じない方はその1その2その3を併せてご覧ください。

何度でも繰り返しますが、オフシーズンにどれだけ頑張ったかで次のシーズンの出来が決まると言っても過言ではありません。皆さんレベルアップのために日々努力なさっていると思います。

しかしながら、競技を始めたばかりの選手や自然と体が大きく強くなる成長期の選手を除けば、パフォーマンスが右肩上がりということは有り得ません。必ず下がりますし、一旦落としてでも心身共にリフレッシュする期間は必要です。

ただ、頭ではわかっていてもパフォーマンスを落とすことに対して不安を感じる方は多くいらっしゃるのではないかとも思います。その不安から普段通りに積み上げて行こうとしてシーズンの頭にパンクするというのは割と起きます。

今回はどの程度までパフォーマンスを落としても大丈夫と考えられるのかMujika氏の研究を基に述べてみます。どうやって上げるのかではなく、下げて良いラインを踏まえておけば多少は不安を払拭出来るかと思います。

研究の概要

・男女18名(男性10名、女性8名)、国際クラスのスイマーに対する研究

・前年度のベストを超えられたグループ(GIR)と超えられなかったグループ(GNI)に分けた

・トレーニングに対する平均強度・量・頻度とパフォーマンスの変動について調査した

・選手の年齢や身長・体重について詳しくは下記を参照

 

結果

・シーズン中のパフォーマンス向上とトレーニングの平均強度には有意に相関があった

・シーズン中のパフォーマンス向上と量や頻度に相関は見られなかった

・シーズン中のパフォーマンス向上シーズン開始時のパフォーマンスには負の相関がみられた。詳しくは下記を参照

 

私見

上記の3つ目は分かり辛い表現かもしれないので補足いたします。前年度のベストを100とした場合、ベストを更新できたグループにおける次シーズン開始時のパフォーマンス低下は6.21±2.30%。そして、ベストを更新できなかったグループのパフォーマンス低下は9.79±2.18%でした。

ベストを更新できたグループは前年度のベストの94%前後でシーズンを開始していたのに対して、更新できなかったグループは前年度の90%前後まで落としてシーズンに入っていたことを意味します。

そして、図をご覧の通り、シーズン中のパフォーマンスの伸びは更新できなかったグループの方が上です。しかし、スタート地点が低いため昨年度のベストを更新できなかったということです。

一昔前は、オフシーズン中はひたすらエンデュランス。高強度をやると仕上がり過ぎて調子を落とすからやるべきではないなんて言われていた時代もありました。相対的にシーズン中の伸びが落ちるのである面においてはその通りです。

しかし、強度とパフォーマンスの向上には相関があるとのことです。オフにひたすらエンデュランスで時間を稼ぐだけというのは良い考えとは思えません。パフォーマンスを維持するために高い強度のトレーニングを行うのが当世風です。

勿論、水泳選手に対する研究なので自転車選手にそのまま当てはめて良いか疑問は残ります。しかし、腑に落ちる報告だと思っております。

FTP300Wまで到達した選手が、3月や4月の頭でFTP270Wくらいだと6月の全日本や富士ヒルクライムには間に合いそうにないなと思いますし、それに対してFTP285W前後にまで達していれば何とかなりそうと感じます。

個人的な見解を最後に述べると、シーズン開幕直前の3~4月に前年度ベストの95%くらいを目標にして準備しておく。

言い方を変えると、5%程度ならば落としても良いし、自分の体に鞭打って前年度のパフォーマンスを維持しなくても何とかなりそうということです。

選手の中にはオフなど存在しないといって右肩上がりを目標に頑張る方がいらっしゃいます。しかしながら、個人的な経験則としてそれは不可能です。

ただ、リフレッシュするために休みを取るとしても好き勝手に遊んで良いというものでもありません。シーズンの開幕から逆算して準備を整えておきましょう。上記の数値が目安になれば幸いです。

編集後記

PCGーJAPANにおけるクライアント様を募集しております。迷いが生じやすい冬場にどうトレーニングを進めて行けば良いのかお悩みの方は下記より是非お問い合わせください。よろしくお願いいたします。

参考文献

Mujika I

Effects of training on performance in competitive swimming

Can J Appl Physiol. 1995 Dec;20(4):395-406.

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