体を上手く使えない理由についての考察~体性感覚の変化~

ストレングストレーニング

ツール・ド・おきなわお疲れ様でした。もう少し続く方もいらっしゃるでしょうが、これにてシーズン終了の方も多いでしょう。束の間のオフをお楽しみください。

 

オフに入り、来シーズンに向けてどういう取り組みをするのか考えている方もおられると思います。S&Cコーチの肩書を有している身からすると筋トレをお勧めしたい所です。

 

しかしながら余り効果を感じない。もしくは全く役に立たなかった経験をお持ちの方もいらっしゃると思います。理由は様々考えられますが、その中の一つとして「何処を鍛えているのか、又は使っているのか分からない」というモノがあるのではと感じております。

 

何処を鍛えているか分からないけれども取り合えずウェイトを挙げていた。挙上できる重量は増えたけれども、必要な所を鍛えられないので弱点の克服には結びつかなかった。結果として役に立たないから止めてしまった例は少なくないと思われます。

 

せっかく取り組んだのに効果を感じられないのは不幸な出来事です。何処を使っているのか分からない状態になる理由は何なのか。そして、それを克服するにはどうすれば良いのか科学的知見を基に考えてみたいと思います。

 

体性感覚の変化について

 

コーチやトレーナー、或いは知人といった第三者から「○○を意識してペダリングしよう」とか「△△の筋肉を使ってバーを引こう」といった指示を受けるかもしれません。

 

勘の良い人はすんなり出来ますが、その言葉の意味する所を理解できない方は少なくありません。むしろ、いきなり思った通りに体を扱える方が稀です。その差は何処で生まれるのかを考えるのにMerzenichが興味深い研究を報告しております。

 

具体的に何をしたかというと、サルの第三指(中指)を切断し体性感覚の領域がどう変化したかを確認しました。結果は下記のスライドをご覧ください。

 

 

切断前には存在した第三指の感覚領域が62日後には消失し、第二指(人差し指)・第四指(薬指)がその領域まで拡大しております。

 

この結果から体性感覚は後天的に変化しうると示唆されています。ある部位を使わないでいるとその感覚を失うし、失った感覚を補うように別の部位が働くと考えられます。

 

従って、日常生活なり体のクセ、怪我といった要因である部分を動かさない状態が持続すると徐々に動かせなくなる。そして、ある部分を動かせなくなると、それを補うために周りの部分を使うようになり、必要な部分を意識して動かすのはさらに困難になると言えそうです。

 

体性感覚をどう活性化するか?

 

それでは一度失った感覚を取り戻すことは不可能なのか?決してそういう訳ではなさそうです。Jenkinsが次のような研究を報告しております。

 

上述と同じくサルを対象とした研究。回転する円盤上の物体を指で触らせ続けるという内容です。結果がどうなったかは下記のスライドをご覧ください。

 

 

上記のように円盤を触らせ続けた第二~四指の感覚器が拡大しております。この研究から、例え受動的であっても刺激を加えると感覚を養うことが可能と示唆されております。

 

つまり、必ずしもある部位を意識して能動的に動かさなくても何とかなりそうだと考えられます。

 

従って、上手く動かせない部位を触って刺激したり、そこを使わざるを得ないフォームでエクササイズを行う事で改善する可能性がありそうです。

 

まとめ

 

・体性感覚は後天的に変化する。使わないでいるとますます使えなくなるので注意が必要

・受動的であっても刺激を加えさえすれば特定部位の感覚を養うことが可能かもしれない

 

サルを対象とした研究なので、ヒトに対してそのまま当て嵌まるかどうかは分かりません。しかし、経験則としては納得できる内容です。

 

何もしなくても上手く体を使える人は良いのですが、そうではない人が競技練習中に狙った部位を意識して使うのは困難です。どうしても使い易い部位(例えば大腿四頭筋)を使ってペダリングやエクササイズを行いがちです。

 

スキル練習やフィッティングといった方法で上手くいかなければ、根本的な体の使い方を再学習するという手順を踏む方が良い結果を生むのではないかと思われます。

 

その際に、ある特定の部位を集中的に鍛える手段として筋トレが最も有効であると考えております。その為には狙った部位をしっかり刺激出来るフォームでエクササイズを行うのが大切です。

 

しかしながら弱点となる部位を使うのは難しく、主観的には窮屈でやり辛く感じるフォームになるはずです。そして、そのフォームを習得するにはとても時間はかかりますが、それでも敢えてチャレンジする必要があります。(結果的にやり辛いだけであり、やり辛いフォームが良いフォームという訳ではありません)

 

独学で行うとどうしても使い易い部位のみでエクササイズを実施しがちです。残念ながらそのやり方で目的を達成するのは困難と言わざるを得ず、最初の数か月だけでもしっかり指導できる人の下でトレーニングを行うのを推奨いたします。

 

このポストがオフシーズンのトレーニングを考えるきっかけになれば幸いです。なお、ブログにまとめるほど長く無い事についてツイッター上で情報を発信しております。宜しければこちらからフォローをお願いします。

 

参考文献

 

Merzenich MM

Somatosensory cortical map changes following digit amputation in adult monkeys.

J Comp Neurol.1984 Apr 20;224(4):591-605.

 

Jenkins WM

Functional reorganization of primary somatosensory cortex in adult owl monkeys after behaviorally controlled tactile stimulation.

J Neurophysiol.1990 Jan;63(1):82-104.

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