自転車選手は冬作られる!その①~冬場のプログラムデザインについて~

オフシーズンのトレーニングについて

12月に入り、シクロクロスをメインとされている方以外はオフシーズン真っ盛りではないでしょうか。この時期にクライアントの方と冬場どうするかという相談をしますし、先方からもどうしたら良いかという質問をよく受けます。丁度良いのでザックリとしたところをブログにまとめてみたいと思います。

まず最初にしなければならないのは

・シーズンの評価・反省


目標を達成できたのか出来なかったのか。狙ったレースにパフォーマンスを発揮できたのか。上手く行かなかったとしたら何が問題だったのか。現状の正しい認識が無ければ対策の建てようがありません。単に順位を振り返るだけではなく、パフォーマンスとトレーニングの質・量を紐付けして確認する必要があります。

現状の確認が取れたならば、それらを踏まえて冬場に取り組むべきは下記の4つです。

・休養
・弱点強化
・有酸素能力のベース作り
・筋力向上

・休養に関して


怪我があればそれを治すのが最優先です。他にも肉体的・精神的にリフレッシュする必要があります。私の経験談に過ぎませんが、どんなに注意深くトレーニングを積み上げても9ヶ月以上やると全く動けなくなりました。必ずどこかでリフレッシュする必要があります。アマチュアにオフシーズンなんて無いと言って1年中やる方もいらっしゃいますが、余り良い考えとは思えません。永延とトレーニングを続けて自転車に乗ること自体が苦痛になった経験はありませんか?

・弱点強化


パフォーマンスの制限因子を見つけ、それを克服する必要があります。例えば、スプリントが弱いからコーナーの立ち上がりで必ず遅れる。ギャップを埋めるために足を使うから集団から遅れてしまうという選手がいたとします。土台を作る冬場だからといってそれを放置してしまえば、来シーズンも同じことの繰り返しです。

・有酸素能力のベース作り


冬場に乗り込む重要性は昔から変わりません。ただし、LSDでひたすら何時間も乗り続けるだけというのは余り良いやり方ではありません。テンポやSST、FTPレベルでのトレーニングを行うのが当世風です。

他にもspeed enduranceだけ、enduranceだけよりも、両方を組み合わせた方がPGC-1αの反応が良いという研究があります。冬場とは言え高い強度のトレーニングを実施しておいた方が有効です。

PGC-1αについては下記を参照

PGC-1α(peroxisome proliferatoractivated receptor γ coactivator-1)というたんぱく質が、筋肉のGLUT-4(筋肉の糖代謝に深い関係があり、糖尿病との関係が深い)やミトコンドリア(持久力やエネルギー代謝に関係し、肥満との関係が深い)の量に関係していることが知られるようになりました。(国立栄養・健康研究所 健康・栄養フォーラムより抜粋)

・筋力向上

自転車選手のほとんどの方が手つかずという印象です。しかし、筋力の向上が持久系パフォーマンスを向上させるのを支持する研究は多数報告されていますし、怪我の受傷率を3分の1にまで減らすという障害予防効果も見込めます。適切に行いさえすれば競技力の向上に有効な手段なのはほぼ間違いありません。

・冬場の週間プログラム(サンプル)

以上を踏まえて1週間のメニューを作成すると下記のようになります。

土日休みのフルタイムワーカーを例に作ってみました。土日の疲れがあるので月曜は休み。フレッシュな火曜に弱点強化。水曜は冬場のメインとなる有酸素ベースのトレーニング。木曜は筋トレを行い、金曜は土日に備えてお休みか軽く技術練習。土曜に最もハードなメニューを行い、日曜はロングライドで走り込む。ただし、今まで何時間も走っていたのならば少し早く帰って来て筋トレを追加するという具合です。

筋トレをここに配置している理由は2点あります。
1つ目は、次の日に休みを入れているので多少無理をしても大丈夫だろうから。
2つ目は、低強度のトレーニング(60~82%HRmax)を削り筋トレに充てても競技力の向上が見込めるというRønnestadの研究があるからです。ロングライドでゆっくり走っている時間を削って筋トレに充てるのが有効ではないかなと思われます。

筋トレの具体的なメニューについては伊藤コーチのブログをご参考ください。動画付きで分かり易いと思われます。
(注)伊藤さんの旧HPが閉鎖されリンクが切れている模様です。記事が復活したら改めてリンクを張り直します。

自転車(ロードバイク)により速く乗るためにオススメする6つの筋トレ【下半身編】

自転車(ロードバイク)により速く乗るためにオススメする6つの筋トレ【上半身編】

【筋トレ】《低負荷×高回数》 VS 《高負荷 × 低回数》どっちの方が効率がいいの?

タイトルにあるように自転車選手は冬作られるという格言があります。来シーズンの目標達成のために冬場に命一杯頑張ってください!

しかし、お一人ではどうトレーニングを組み立てたら良いのかなかなか分からないものです。もし、トレーニングについてご相談があれば下記のリンクからお申込みください。

コーチング、トレーニングプランご希望の方へ | 南部博昭のブログ

参考文献

Aagaard P

Effects of resistance training on endurance capacity and muscle fiber composition in young top-level cyclists

Scand J Med Sci Sports 2011: 21: e298–e307

Lauersen JB

The effectiveness of exercise interventions to prevent sports injuries: a systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials.

Br J Sports Med.2014 Jun;48(11):871-7

Rønnestad BR

Strength training improves 5-min all-out performance following 185 min of cycling.

Scand Med Sci Sports.2011 Apr;21(2):250-9.

Rønnestad BR

Strength training improves performance and pedaling characteristics in elite cyclists.

Scand Med Sci Sports,2015 Feb;25(1):e89-98.

タイトルとURLをコピーしました