脂肪燃焼を促す6つの方法~Train-Low~

グリコーゲンは短時間から長時間の運動においてATPを再合成するために重要なエネルギー源となります。しかし、グリコーゲンの貯蔵量は限定されており、枯渇すると疲労をもたらす原因の一つと考えられています。疲労に関する詳細なメカニズムは未だ解明されておりませんが、グリコーゲンの貯蔵量を増やしておくと運動の継続時間を有意に増すことが報告されています。

この貴重なグリコーゲンの低下を防ぐためにどうするか?その方法論として「低糖質トレーニング」に対して注目が集まっています。実際、高いグリコーゲンの状態に対して、低いグリコーゲンの状態で行ったトレーニングの方が脂質代謝を促進する反応を増加させるという報告があります。

本日はAsker Jeukendrupのブログを基に他の知見を少し紹介する形で、低糖質トレーニングを行う6つの方法についてまとめてみたいと思います。

・低炭水化物ダイエット

炭水化物の摂取を抑え、脂質やタンパク質からエネルギーを摂取する方法です。食事やトレーニングの程度によって筋・肝臓グリコーゲンの貯蔵量が減少します。なお、高脂肪食は3~7日程度といった短い期間でも脂質の代謝を亢進させることが報告されています。しかし、血糖の取り込み能が低下し、糖質の酸化能も下がることが報告されています。従って、高い強度のトレーニングを行う際には質・量共に下げる可能性があり注意が必要です。

 

・1日に2回のトレーニング

1回目はグリコーゲンを減らすことを目的とし、2回目のトレーニングの前には糖質をほとんど、または摂取せずに行います。低グリコーゲンの状態を作り脂質代謝を亢進させるには適したやり方と言えますが、回復が追い付くかがネックになってきます。場合によっては追加の回復期間を設ける必要があります。

 

・朝食前にトレーニング

朝食前の「空腹」時に行うトレーニングです。トレーニングの開始1時間前にコーヒーを飲むのが一般的です。(砂糖やミルクは入れない)
この場合、筋グリコーゲンには影響を与えずに肝グリコーゲンが低下した状態で行われます。1日に2回のトレーニングと同様に追加の回復期間を設ける必要があるかもしれません。

 

・炭水化物を補給せずに長い時間のトレーニング

炭水化物を摂取せずに長い時間のトレーニングを行う方法です。このタイプのトレーニングは正常なグリコーゲン貯蔵量でスタートします。しかし、時間経過と共にグリコーゲン量が低下し強度を維持するのが困難になります。これらが追加のストレスを体に与え、トレーニングの効果を高めるかもしれません。しかし、後半にはトレーニングの強度を保つのが困難になるためトレーニングの質が損なわれる可能性があります。

 

・リカバリー期に炭水化物を摂取しない

トレーニング終了後、通常は迅速に回復させるため炭水化物を摂取することが重要です。しかし、敢えて1時間から数時間、炭水化物を摂取せず放置することで脂質の代謝を高める可能性があります。ただし、回復を犠牲にしている可能性があります。

 

・Sleep Low

最近の研究で報告された方法です。睡眠前にトレーニングを行い(この時は炭水化物をしっかり摂取してハードなトレーニング)、翌朝トレーニングを終えるまで炭水化物を摂取しないというやり方です。1日の炭水化物摂取量は決して少なくありませんが(6g/kg))、摂取するタイミングをコントロールすることで低糖質の状態を作り出すやり方と言えます。

なお、この研究ではコントロール群に対して有意に最大下運動時のサイクリング効率の向上(心拍数低下・脂肪燃焼効率向上)、150% peak aerobic powerにおける疲労困憊までの時間の延長、10㎞走のタイム短縮、体脂肪の減少が見られました。理由は解明されておりませんが、低グリコーゲン状態でのトレーニングが体に対して追加のストレスを加え改善が見られたと考えられます。

 

まとめ

以上、低糖質トレーニングを行う6つの方法です。低グリコーゲンの状態を作り出すことで体に追加のストレスを加え、結果的に脂質の代謝を亢進させるのではないかと考えられます。

ただし、脂質の代謝が亢進する代わりに糖質の摂り込み能・酸化能の低下。トレーニングの強度が下がる危険性。回復が遅れる可能性といった問題点も併せ持ちます。これらの被害を最小限にするには、比較的低強度のトレーニングでも良いオフシーズンやレスト週に実施するのが良いのではないかと思われます。

高糖質・低糖質どちらが正しいやり方という訳ではなく、どちらにもメリットとデメリットがあります。それらを踏まえて適応期間を利用しパフォーマンスの向上に役立てていただければと思います。

 

参考ブログ

mysportscience(Asker Jeukendrupブログ)

http://www.mysportscience.com/single-post/2015/07/13/6-Ways-to-trainlow

 

参考文献

Marquet LA

Enhanced Endurance Performance by Periodization of Carbohydrate Intake: “Sleep Low” Strategy.

Med Sci Sports Exerc.2016 Apr;48(4):663-72

 

東京大学大学院総合文化研究科
八田 秀雄

第13回乳酸研究会パンフレット

タイトルとURLをコピーしました