前回のブログで高強度インターバルトレーニングにおける強度の問題について触れてみました。今回はワークアウトなりメニューなりがなぜそういった「形」になるのかついて記してみたいと思います。
最初に申し上げておくと、学術論文を基にベストの方法を探るというよりも、過去にも触れている基礎知識を確認しながらトレーニングに対する考え方を述べるという哲学や思想のようなものとお考えください。
HIITを構成する要素
まずHIITを構成する要素は12個御座います。HIIT Scienceのこちらの画像が分かり易いかと思います。
強度や時間、本数は気にされている方が多いと思います。そういった大きな所から、細かい点だと気温や標高は持久的パフォーマンスに対して直接的に影響いたします。多少和らいだとはいえ暑さは非常に消耗いたします。走りやすい季節でこなせても現在ならば無理ということは十分起こります。
また、減量中はグリコーゲンの貯蔵量が減っておりしかるべきパフォーマンスを発揮できないなんてことも考えられます。
後はロードオンリーだと余り気にしなくても大丈夫ですが、CXやトライアスロンのようにランが含まれるならばどういった運動様式を用いるかは重要な要素となります。
自転車だけでトレーニングを行っていると、いざランを行う時に地面からの衝撃に対応できないなんてことはよくあります。
高強度の必要量と注意点について
前回のブログでVO2maxを向上させたいのならば、>90%VO2maxの時間をなるべく増やすのが有効であると述べました。
具体的にどれくらい必要かと言うと、BuchheitとLaursenの研究によると持久的スポーツの選手は1セッションに10分以上行うのが望ましいと主張しております。
ここで注意しなければならないのは、酸素摂取量は運動の後追いです。詳しくはこちらの画像をご覧ください。
横軸が時間で縦軸が酸素摂取量です。運動開始前は安定していた酸素摂取量が運動開始と同時に上昇していくのが見て取れます。そして、6分くらいでVO2maxに到達しているというものです。
ご注意いただきたいのは90%VO2max前後に到達するのに2分くらい経過している点です。6分間運動したとしても90%VO2maxに到達している時間は4分前後ということです。
勿論、運動強度によって90%VO2maxに到達する時間は変化いたします。より高い強度ならば到達する時間は短くなりますし、低い強度ならば相対的に長くなります。
こういった事を考慮しながらどれくらいの量をこなさなければならないかを考える必要が御座います。仮にBuchheitとLaursenの主張に倣い10分間確保しようとしたら、4×3分だと若干足りないかもしれません。
ワークアウトの文脈について
ここまで基礎的な知識について再確認いたしました。そして過去の研究や実践で培ってきた経験、そして上記のような知見があるとある程度の形は定まって来ます。
例えば、タバタインターバルは何処かで聞いたことがあるでしょうし、最近であればCarsonが効くとか様々な情報が出回っていると思います。
実績のあるワークアウトはそれだけ考えられている場合が多いですし、取り入れるのは悪いことでは全くありません。
しかし、それを今の自分にとって本当に必要なのかはよく考えていただきたいと思っております。こちらをご覧ください。
例えば、タバタインターバルが良いワークアウトな訳ですが、トライアスロンのアイアンマンディスタンスといった超持久的競技に向いているのかどうか。
選手の鍛錬度には差がありますし、ペースの上げ下げが得意な選手もいれば苦手な選手もいます。苦手な人に無理やりやらせるよりも、多少効率は落ちたとしてもやりたいと思えるモノを選択する方が良い結果を招くかもしれません。
他にも、オフシーズン真っ最中と今週末にレースがある場合で適しているワークアウトは異なります。こういったパズルのピースを嵌めていった結果としてワークアウトが形作られます。
実績のあるワークアウトが気になるのは致し方ありません。しかし、それを形作るパズルのピースである左側の方をより重視して欲しいなと思っております。そこがしっかりしていれば自ずとワークアウトの形は決まります。
是非、自分自身のピースがどうなっているかをよく考えた上で何に挑戦するかお選びください。その際に今回のブログが参考になれば幸いです。
参考文献
Buchheit M、Laursen PB
High-Intensity interval training, Solutions to the programming puzzle,Part I: Cardiopulmonary emphasis
Sports Med 2013 May;43(5):313-38
Murgatroyd SR
Pulmonary O-2 uptake kinetics as a determinant of high-intensity exercise tolerance in humans
J Appl Physiol 2011 Mar;110(6):1598-606