論文紹介:速筋繊維と遅筋繊維でグリコーゲンの回復速度が異なるそうです

トレーニング

ようやく確定申告が終わり、多少落ち着いたので久方ぶりのブログ更新です。いよいよ3月に入り長いようで短いオフが終わり、シーズンの開幕を迎える方がいらっしゃるのではないかと思います。

そうすると、レースに向けて疲労を抜いてコンディションを整える段階です。大きな枠組みに関しては過去にまとめてありますので、コチラをご覧ください。

パフォーマンスが上がるというデータがあるから休むべき時は積極的に休むという選択

今回はもう少しミクロな視点です。ご存知かもしれませんが、エネルギー源であるグリコーゲンの貯蔵量は持久的運動の継続時間と正比例いたします。従って、持久的スポーツ(マラソンや自転車ロードレース等々)ではグリコーゲンの貯蔵量を増やそうと高炭水化物の食事をしたり、消費したグリコーゲンの回復を促進するために運動後すぐに炭水化物を摂取することを推奨されたりしています。

一般的にはこのグリコーゲンの回復に24~48時間掛かると理解されているようですが、速筋繊維と遅筋繊維で回復の速度が異なるという論文を見つけたのでご紹介いたします。

 

原著はコチラです。

Enhanced Glycogen Storage of a Subcellular Hot Spot in Human Skeletal Muscle during Early Recovery from Eccentric Contractions

  

概要

・レクリエーションレベルで活動的な男性5名が被験者

・外側広筋の筋生検を実験開始2週間前、実験3時間後、24時間後、48時間後に行った

・アイソメトリックなニーエクステンションを10RM15セット行った

・エクササイズ間のレストは3秒。セット間のレストは60秒

・運動後48時間において定められた時間に高炭水化物の飲料を摂取し続けた

 

 

結果

・遅筋繊維のみにおいて運動後3時間でグリコーゲンの再合成率が150%向上した。また24時間後までこの増加は継続した(168%)。

・しかし、この再合成率の増加は48時間後には維持出来なかった。また遅筋繊維、速筋繊維双方においてコントロール群に比べグリコーゲンの貯蔵量が低かった(-35%)

私見

示唆に富む内容だなと感じました。まず、筋肉の線維によってグリコーゲンの回復速度が異なる点。Block Periodization のように明確な目的があれば別ですが、各筋繊維において同じように回復する訳では無いというのを知っておけば、速筋繊維にダメージを与えるようなハードワークを連日行うのは強度を下げる原因になる非合理的な行動と考えられます。

それに対して、遅筋繊維がメインに動員されるような低強度のトレーニングならば比較的短い期間で繰り返しても大丈夫そうだと言えそうです。

いちいち言わなくても恐らくほとんどの方は体感していると思われますが、科学的な知見として知っておくとより理解が深まると思われます。

また、48時間と結構な時間が経過してもグリコーゲンの貯蔵量が完全に回復する訳ではなさそうというのも大事です。

勿論、この実験の被験者はレクリエーションレベルのようなので、鍛錬者だともっと短い時間で回復が完了する可能性は十分あります。しかし、ハードなトレーニングを行う予定であったりレースが控えているのならば、48時間以上前までに高強度のトレーニングは終えておく方が無難とは言えそうです。

もし、レース勘や高強度の感触を忘れたく無いというのであれば、極短時間にしてグリコーゲンの消費量を抑えるといった工夫をすると良いでしょう。

重要なチーム練やレースがあると焦りから最後まで練習を継続してしまいがちですが、こういう知見があると安心して休めるのではないかと思われます。上手く使って頂ければ幸いです。

参考文献

Nielsen J

Enhanced Glycogen Storage of a Subcellular Hot Spot in Human Skeletal Muscle during Early Recovery from Eccentric Contractions

PLoS One 2015 May 21;10(5):e0127808. doi: 10.1371/journal.pone.0127808. eCollection 2015

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