フィジカルを疎かにしたら未来はありません

ストレングストレーニング

皆さんご存知とは思いますが、私はPeaks Coaching Groupという会社でパワーメーターを利用したトレーニングのコーチを生業としております。しかしながら、もともとはストレングス&コンディショニングコーチ(S&Cコーチ)ですし、現在もこちらが本業のはず・・です。

 

そう認識している方は余りいないのではないかと最近感じておりますが・・・

 

さて、コーチングを担当しているクライアントの方によく聞かれますし、セミナーを開催した際にも下記のような質問を受けます。

 

曰く「筋トレはやった方が良いのですか?」

 

幾つか例外はありますが、こういう時の答えは決まっております。

 

「競技練習の時間をしっかり確保出来るのならば筋トレはやった方が良いですよ」

 

本日はそう考えるに至る理由についてお話ししたいと思います。

 

特異的トレーニング vs 非特異的トレーニング

 

まずはこちらの研究をご覧ください

 

Effect of Different Sprint Training Methods on Sprint Performance Over Various Distances: A Brief Review.

 

いわゆるレビュー論文と呼ばれるもので、スプリント能力を向上させるための様々なトレーニング方法についての研究報告です。

 

その中には

 

・特異的トレーニング(=普通のスプリント、そり・バンドを使用し抵抗を加えたスプリント、牽引装置や下り坂を利用したスプリント)

・非特異的トレーニング(=レジスタンストレーニング、ウェイトリフティング、プライオメトリクストレーニング)

・両方を組み合わせたトレーニング

 

といった3つのトレーニングについてまとめております。結果は下記の通りです。

 

 

0-10m、0-20mに関しては抵抗を付けたスプリントに一歩譲りますが、トータルでは普通にスプリントするトレーニングが最も有効でした。多少順位に差はあれど、特異的トレーニングと分類される群の方がスプリントの向上に有効と報告されております。

 

そして、非特異的トレーニングと分類される群でもスプリントの向上に寄与するけれども、余り効果的では無いとも示唆されております。

 

スプリント能力を向上させたければスプリントをすれば良いという実も蓋も無い結果です。それでは競技練習だけを行う方が効率的で、筋トレを代表とした補助的なトレーニングはやらない方が良いのかと言えばそれは早計です。

 

筋力の強いグループ vs 筋力の弱いグループ

 

次にこちらの研究もご覧ください。

 

The impact of strength level on adaptations to combined weightlifting, plyometric, and ballistic training.

 

こちらは何かと言うと、

・筋力の強いグループ(バックスクワットで体重の2.01 ± 0.15倍を担げる)

・筋力の弱いグループ(バックスクワットで体重の1.20 ± 0.20 倍を担げる)

 

という二つのグループに対して、ウェイトリフティング・プライオメトリクストレーニング・バリスティックなエクササイズを含む10週間のトレーニングを課しどう変化したかを確認したという研究です。

 

結果は下記の通りです。

ジャンプスクワットにおけるピーク速度が、筋力の強いグループは2.65±0.10m/sだったのが5週間で2.80±0.17m/sに向上。

筋力の弱いグループは2.43±0.09m/sだったものが5週間後に2.47±0.11m/sと余り変化が見られなかった。

 

実験終了後には両グループともに向上が見られたのですが、もともと持ち合わせている筋力によって伸びしろが異なったという内容でした。

 

フィジカルは弱いよりも強い方が伸びしろがあるし有利です。従って、高いレベルを目指すのであれば基礎的な体力が相応のレベルを求められます。むしろ、基礎的な体力が競技力の上限を決めると言って差し支えないと思います。

 

まとめ 

 

1つ目の研究から、競技力を高めたければ競技練習を最優先しなければならないと結論付けられます。

 

競技練習を行っていれば競技力も基礎体力も上がるうちは問題ありませんが、レベルが高くなるほど競技練習だけでは基礎体力を向上させるには刺激が不十分になります。

 

そして、基礎的な体力が伸びしろを左右するので、今以上のレベルを目指すならば何処かで基礎的な体力を向上させる補助的なトレーニングが必要になります。

 

しかしながら、現在の日本においてそれを十分に理解し、フィジカルと競技練習の両方を命一杯行っている方は極少数です。実に勿体無い話しです。

 

特に持久的スポーツのアスリートは筋トレを毛嫌いしがちで、基礎となるフィジカルの弱い人が多いと感じております。そこがボトルネックになり殻を破れない方が多数いらっしゃるのではないかと思われます。

 

他者がやっていないからこそ、基礎的なフィジカルを鍛えるのに有効な筋トレを取り入れる恩恵が大きいのではないかと考えております。

 

それに、高い筋力を有する事が競技力において有利であること以外にも、怪我の受傷率を3分の1程度にまで減らし、オーバーユースによる傷害の発生率も半分程度にまで減らすとSuchomelのレヴュー論文に報告されております。

  

持久的なスポーツをやっていらっしゃる方は練習量が多いです。それに伴い膝や腰が痛むという何かしらの障害を負っているにも関わらず、予防する処置を余りとりません。

 

最も重要な競技練習を沢山積み上げるためにも、補助的なトレーニングに挑戦するというアプローチに目を向けて頂きたいものです。

 

それでは、どれくらいの練習量をこなしていれば補助的なトレーニングを行うべきなのかというのは難しい問題です。様々な状況を加味して判断しなければなりませんが目安としては週に7~8時間が最低ライン。出来れば10時間以上行えている方と考えております。

 

理由としては、全体の練習量の1~2割くらいを補助的なトレーニングに充てると良いのではないかと考えているからです。ジムのセッションが1回1時間くらい。週に1~2回行うとすると上記の時間が必要かなと思われます。

 

オフならば補助的なトレーニングの割合をもっと増やしても良いかと思います。頑張って競技練習をしているけれども頭打ち感じていらっしゃる方は、まずは土台となる基礎体力の向上を目指してみると良いのではないでしょうか。今回のポストが参考になる事を願っております。

 

なお、実施でストレングストレーニングにご興味のある方はこちらからお問い合わせください。パーソナルトレーニングのご用命お待ちしております。

  

参考文献

Rumpf MC

Effect of Different Sprint Training Methods on Sprint Performance Over Various Distances: A Brief Review.

J Strength Cond Res.2016 Jun;30(6):1767-85

 

James LP

The impact of strength level on adaptations to combined weightlifting, plyometric, and ballistic training.

Scand J Med Sci Sports.2018 May;28(5):1494-1505

 

Suchomel TJ

The Importance of Muscular Strength in Athletic Performance.

Sports Med.2016 Oct;46(10):1419-49

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