怪我をした際の考え方~クロスエデュケーションについて~

トレーニング

遅ればせながら明けましておめでとうございます。年末年始のお休みが終わり、皆さん生活のリズムは取り戻せましたでしょうか。

X(旧ツイッター)でリポストしたのでご存じの方もいらっしゃると思いますが、栗村修さんが怪我をした方からの質問に対してコラムを記載されてました。それに触発されたポストです。

怪我をした場合、安静にするのが最も安全確実です。しかしながら、アスリートとして高いレベルを目指すのならば、体力を出来る限り落としたくありません。そのためにどうしたら良いのかについて述べてみたいと思います。

クロスエデュケーションについて

余り聞き慣れない言葉だと思います。それではクロスエデュケーションとは何か?これは片側の運動によって、運動を行っていない反対側にも運動の効果が現れるといった現象です。

研究としては古くからあります。1894年にイェール大学生理学研究所が片側レジスタンストレーニングを行った後に訓練を行っていない反対側の四肢の筋力向上を報告し、それをクロスエデュケーションと名付けました。そして、その後も複数の研究によって効果が確認されてます。

クロスエデュケーションの効果を示す報告は多数あれど、残念ながらそのメカニズムについては未だ不明な点が多いです。ただ神経系の現象と考えられているみたいです。

メカニズムの解明は今後の研究に期待するとして、怪我をして満足いくトレーニングを行えない状況ならばこの知見を利用しない手はありません。

落車をして鎖骨や大腿骨を骨折した。その際、無事な方の手や足だけでも動かしておく。具体的にはダンベルやレッグプレスといった機材を利用しても良いですし、自重で押したり引いたりでも良いと思います。

そうすると、左右差を助長しかねないのではと危惧する方がいらっしゃると思います。しかしながら、多少左右差を助長することになったとしても、怪我をした部位の筋力低下を抑え復帰を早める方がメリットは大きいと考えております。

下肢のトレーニングが上肢のトレーニングに影響を及ぼす可能性について

もう一つ知見を紹介したいと思います。Bartolomeiによると、上肢・下肢共に高強度(4~5×88-90%RM)のレジスタンストレーニングを課したHI群。上肢は高強度(4~5×88-90%RM)、下肢は筋肥大を狙った高ボリューム(10~12×65~70%)のレジスタンストレーニングを課したMP群で比較しました。

結果として、下肢に高ボリュームを課したMP群の方が上腕の筋量が+5.8%(HI群は+1.7%)。ベンチプレスの1RMにおいてはMP群は+7.2%(HI群は+2.1%)といった具合に有意にプラスの効果をもたらしました。

先ほどは左右についてでしたが、ご覧の通り上下でも何らかの影響を及ぼすと考えられます。足を怪我してしまったから腕立て伏せや懸垂だけでもやる。怪我を悪化させない範囲で何とか体を動かす行為がより良い競技復帰に対して有効だろうと思われます。

勿論、医師から禁忌事項が伝えられていたり、理学療法士やアスレティックトレーナーといった専門職の方からしかるべき指示が出ていればそれに倣うべきです。ただ、こういった知見をモチベーションや体力の維持に役立てていただければと思います。

今回はここまでにして、次回は体を動かすこと自体ができない場合について述べてみたいと思います。次回もよろしくお願いいたします。

参考文献

Hendy A

The Cross-Education Phenomenon: Brain and Beyond

Front Physiol. 2017 May 10:8:297. doi: 10.3389/fphys.2017.00297. eCollection 2017.

Bartolemei S

Effect of Lower-Body Resistance Training on Upper-Body Strength Adaptation in Trained Men

J Strength Cond Res. 2018 Jan;32(1):13-18.

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