セミナーや確定申告といった諸々が終わり、ようやく平常運航に戻ったので久方ぶりのブログ更新です。全く更新していなかった時期にも見に来てくれていた方には感謝いたします。復帰一回目の本日は、今までとは少し毛色を変えて心理学的な内容についてです。
4月も終わり各地でレース(競技会)が頻繁に開催されています。レース(競技会)に参加するという行為は、ある一定の条件下で体力・技術・精神力を他者と比較され、社会的評価を受けることを意味します。望んだ結果を得られる選手はほんの一握りであり、上手く行かない事に対して不安や恐れを感じるのは驚くことではありません。
適度であればパフォーマンスに良い影響を及ぼしますが、過度になれば所謂「プレッシャーに潰された」という状態になりかねません。勝負の場に身を置く限りは不安や恐れと付き合う必要があります。しかしながら、不安や恐れというものがどういった状態なのか。そして、それを乗り越えるにはどういう方法があるのかは余り知られていません。今回のブログは二回に分けてこれら心理学的な問題について少しだけ触れてみたいと思います。
不安の種類
「不安」とはストレスを意味する言葉として使われますが、それがどういう意味を持つのか特定されていることは稀です。NSCAの教本によると不安とは「自律神経や随意神経の活性の上昇、内分泌活性の上昇を伴う心配と不確実性についての主観的な経験」と述べられています。
もう少し詳しく述べると状態不安と特性不安の二つに分けられます。
状態不安
ある状況に対して心配や、コントロール出来ない覚醒を現実に経験すること。
(例)雨が降ったらどうしようと心配になる。失敗したらチームメイトに何て言われるか分からなくて眠れない。
特性不安
ある状況を脅威に感じるという潜在的な性質。前者に比べて生まれ持った性格的な要素が強い。
(例)雨が降っていたら余り走りたくないなと感じる(軽度の不安を感じる)。雨が降っていたら怖くて走れない(重度の不安を感じる)。
後者は性格的な要素が強く変えることが困難なのに対して、前者は状況が変化すれば不安を解決できる場合が多いです。
不安を認識する
不安を感じること自体は致し方ありません。それを乗り越えるには何に対して不安を感じているのか。そして、自分でどうにか出来るものなのか、出来ないものなのかを正しく認識する事が必要です。
例えば「雨が降ったらどうしよう」と感じていらっしゃるとします。雨が降るかどうかは自分ではどうにもなりません。この点は幾ら考えても時間も体力も無駄なので諦めるしかありません。
それに対して「雨が降ったら滑りやすいから不安」ならば解決の方法があります。例えば、グリップの良いタイヤに交換する。濡れても効くブレーキを用意する。水溜まりがある所や苔が生えている所を試走で入念にチェックする。
他にも、極端な事を言えば、アマチュアならば雨が降ったらレースに出ないという選択をするのもありだと思います。雨が降ったら走らないと決めてしまえば「雨が降ったら滑りやすいから不安」という事柄について考える必要はなくなります。
何に対して自分は不安を感じるのか。それは解決可能なものなのかどうか。この点を正しく認識できれば解決への行動に繋がり、結果的に不安を減じる(場合によっては無くす)ことが可能になります。
一度、自分自身がどういった事に対して不安や恐れを抱くのか。そして、どういった事柄に対しては積極的になれるのか考えてみるのをお勧めします。思わぬ点で自分の強みや弱点に気づくかもしれません。
短いですが今回はここまでで、次回はどうやったら不安が緩和されるのか。もしくは、パフォーマンスを向上させる方法があるのかについて触れてみたいと思います。
参考文献
Baechle T.
Earle R. 編
Essentials of Strength Training and Conditioning.
National Strength and Conditioning Association
Mujika I.
エンデュランストレーニングの科学~持久力向上のための理論と実践~
有限会社 NAP