分かっていそうで意外に分かっていないVO2maxのお話し

トレーニング

持久的スポーツを行っていればVO2maxという単語を目にしたことはほぼ間違いなくあると思います。日本語で記載すると最大酸素摂取量という奴です。

 

読んで字のごとく酸素をどれだけ体に摂り込めるかを意味します。これが全身の細胞レベルで利用することが出来る酸素量を表し、心肺系体力の指標としてよく用いられます。

 

なぜ指標として用いられるほど大事かと言えば、運動の強度が上がるにつれて必要なエネルギーは増大し、そのエネルギーを供給するには酸素が必要だからです。従って、VO2maxが高ければ高いほどより高い強度の運動を可能ならしめる訳です。

 

大事な指標でありながら、巷に溢れる情報を眺めていると正しく理解できているのか?と感じることが多々あります。知っている人からすれば今更ですが、どうやって算出しているのか。ある年齢からは上がらないとか、いや上がるといった話しは何を指しているのか考えてみたいと思います。

 

 

VO2maxの算出方法

最初に酸素摂取量の算出方法をご案内します。これが分かればほぼ解決します。

酸素摂取量 = 心拍出量 × 動静脈酸素較差

 

これだけだと少しわかり辛いかもしれませんのでもう少し分解いたします。

(最大)酸素摂取量 = {(最大)心拍数 × 1回拍出量} × (動脈血酸素飽和度 - 静脈血酸素飽和度)

 

こうすると何となく分かるのではないでしょうか。左側の括弧は心臓が何回動いているか。そして、1回動くことでどれだけ血液を送り出せるかで決定されます。

 

そして、右側の括弧は動脈にどれだけ酸素が存在しているか。筋肉といった末端部分でその酸素をどれだけ抜き取れるかで決まります。これらの合計値が(最大)酸素摂取量になります。

 

よく数値として出てくる一般的な成人男性は40くらいだとか、インデュラインは88だったというのはこの式で求められた数値をml/kg/minで割り出したものです。つまり、1分間に体重1kgあたり〇ミリリットル摂取出来ることを意味します。

 

成人したらVO2maxは向上しないのか?

ここからもう少し踏み込んでみたいと思います。これも何処かで耳にしたことがあると思われますが、二十歳前後をピークに最大酸素摂取量は向上しないと言われています。

 

これはある意味では正しいですし、ある意味では誤っております。理由はよく分かりませんが加齢に伴い最大心拍数は減って行きます。(恐らく酸素を抜き取る能力も落ちる)

 

酸素を抜き取る能力が生理的限界値に達してると仮定すれば、心拍出量が減るぶん最大酸素摂取量は減って行く一方です。従って、最大酸素摂取量が二十歳前後でピークを迎えるというのは正しいと言えます。

 

しかし、あくまでその人の生理的限界値の話しであり、現在よりも向上しないことを意味する訳ではありません。なぜならば、1回拍出量と酸素を抜き取る能力を生理的限界値まで鍛えられている人がどれだけいるのか。この点に着目して頂ければご理解いただけると思います。

 

勿論、加齢に伴い代謝が衰えて行くので上がり辛くなるでしょうが望みを捨てる必要はありません。今までやって来た事をさらにレベルアップさせたり、今までとは異なるやり方を試す事で向上するやもしれません。

 

この点に関しては、過去にブログにまとめてますので宜しければご参考ください。

低強度と高強度の一致点と相違点~主に血流能力において~

強度を上げるか、ボリュームを増やすか論争

 

VO2maxとパワーは別物

この点にも触れておきたいと思います。VO2maxとは酸素をどれだけ取り込めるか。つまり、エネルギーをどれだけ生み出せるかという指標です。

 

それに対してパワーは運動の結果です。体内で生み出されたエネルギーを基に体を動かし、動かした体によってある部位に加えられた動力です。単位はWattを用います。

 

使用しているエネルギーの多寡だけではなく、筋力やスキル、暑さや寒さといった外的な要因、他にもメンタルといったそれら全てを含めた総合的な結果です。

 

同一個体であれば筋力やスキルが大幅に変わることは無いと仮定して無視しているのかもしれませんが、単位が異なる物を同列に扱ってはなりません。大きな相関関係にあるとしても別物です。もし表現したいのであればVO2max時のパワーと記述するべきです。

 

酸素摂取量が減ったとしても筋力やスキルの向上によってパワーが増大する事は起こり得ますし、逆に酸素摂取量は増えてもパワーが低下する事も起こり得ます。

 

何かが頭打ちになったとしても、他の何かで補う事は十分可能です。これしか無いと決めつけずに広い視野を持ってトレーニングに励んでいただきたいものです。

 

まとめ

Q、成人したらVO2maxは増えないの?

A、生理的限界値は成人前後でピークを迎えます。

 

Q、それではVO2maxは向上しないの?

A、鍛える余地があれば現在よりも向上する可能性はあります。他にも、余計な脂肪を削る事で体重1kg辺りの数値を改善する事は可能です。もしくは、貧血といった下げる要因を解消する事で向上するかもしれません。

 

Q、VO2maxとは5分のパワーと同じものなの?

A、別物です。前者はあくまで酸素をどれだけ取り込めるかを意味します。パワーは様々な要因によって決定される総合的な結果です。VO2maxが下がったとしてもパワーが向上する可能性はありますし、逆も起こり得ます。

 

以上、長々とVO2maxという言葉について述べて来ました。最大心拍数が減少していくとしても、酸素を抜き取る能力を鍛えるようなトレーニングを課すことで改善出来るかもしれませんし、生理学的な指標は低下したとしても、筋力やスキルの向上を目指す事でパフォーマンスは向上するかもしれません。

 

普段何気なく使っている言葉の意味を調べる事で何をしなければならないか見えてくることもあります。今回のポストがその一助になることを願っております。

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