筋量を維持しながら脂肪を削るためのヒント

ニュートリション

1月も半ばになりまして、お太れもそろそろ手仕舞いにしないとなぁといった所でしょうか。さて、自転車競技には登りがつきものです。その際に自転車と自体重を持ち上げなければならないので、基本的には軽い方が有利です。従って体重管理が重要になります。

体重は摂取したカロリーと消費したカロリーのバランスで決まります。プラス収支ならば体重が増え、マイナス収支ならば体重が減ります。とてもシンプルな話しです。

注意しなければならないのは、体重制限のあるスポーツを除けば、競技者にとっての減量とは競技力を損なう余計な脂肪を削る事を意味します。減量というよりも厳密に言えば減脂肪と言うべきでしょう。筋肉量を維持しながら脂肪を減らすにはカロリーだけではなく、タンパク質・脂質・炭水化物の摂りかたが大きく影響します。本日は体重を減らす際に注意するべきポイントについてざっくりまとめてみたいと思います。

カロリー

相当量の除脂肪組織を失わず大幅に体重を落とすことは不可能です。全米ストレングス&コンディショニング協会によれば、除脂肪組織を維持しながら脂肪を減らすには1週間で体重の1%が限界と言われています。これは週平均で500~1000gの減脂肪になり、1日におよそ500~1000kcalのマイナスに相当します。

これより速い減量は脱水や筋量の減少、ビタミンやミネラルの欠乏に繋がりかねません。無理なくこなすにはこれの半分程度を目安にすると良いでしょう。また、脂肪の落ちる速度は体のサイズによって異なります。例えば、体重50㎏の選手は1%の500gを上回るべきではないですが、100㎏の選手ならば1000g落しても比較的安全だと思われます。

徐々に体重を落せば、最大限に除脂肪組織を維持したまま脂肪量を減らせます。それに対し、急激な減量によって脂肪組織の3倍の除脂肪組織が失われる場合もあります。レース前に無理やり調整するのではなく、今から準備いたしましょう。

タンパク質

タンパク質とは20種類のアミノ酸からなる体を作るための栄養素です。しかし、エネルギーが足りなくなるとタンパク質を分解してエネルギー源としても使用されます(糖新生)。従って、カロリー収支がマイナスになる減量期では体を作る為に使われる量が減るため、普段の生活よりも多くのタンパク質が必要です。

文献によって多少差はありますが日常生活で必要とされるタンパク質の量は0.8g~1.0g/kg位です。競技者ですと1.2g~1.5g/kg位。パワー系の競技だと2.0g/kg~というのが目安です。Murphyらの研究によると筋肉量を減らさずに減量する為には1.8g~2.7g/kg位を摂取する事を推奨しています。パワー系競技と同じかそれ以上なので、かなり高タンパク質な食事にするべきと言ってよいでしょう。

脂質

次に脂質ですが、こちらは体のエネルギー源です。厚生労働省によると1日の摂取カロリーの20~30%を目安としています。減量を考えると脂質を削るのを真っ先に思い浮かべますが、細胞膜の構成成分であり、胆汁酸、性ホルモン、副腎皮質ホルモンといったステロイドホルモン、ビタミンDの前駆体となるため、過剰な制限は体に有害です。

具体的に言えば、極端に脂質の少ない食事(総カロリーの15%未満)はテストステロンの生成を減少させ、代謝を抑制して筋の成長を妨げる可能性があります。

そして、魚油やアマニ油といったオメガ3脂肪酸は抗炎症作用や中性脂肪を下げるというデータがあるので、良質な脂質の摂取はむしろ推奨いたします。

炭水化物

最後に炭水化物ですが、こちらは糖質+食物繊維を指します。炭水化物も体のエネルギー源です。上記の2点からタンパク質と脂質の摂取量が決まりますので、残りの分を炭水化物から摂取するという形になります。

ケーススタディ

50㎏の選手が減量を試みる。
50㎏の1%は500g
脂質1㎏約7000kcalなので500g=3500kcal
7日間で割ると1日500kcalのマイナスです。
そして、必要摂取カロリーは大体1800~2000kcalでしょうか。
仮に2000kcalとします。
タンパク質の必要量は2.0g/kg=100g=400kcal
脂質は多少余裕を持たせて2000kcal×0.25=500kcal

2000kcalー500kcal(減量分)-400kcal(タンパク質分)-500kcal(脂質分)=600kcal
この600kclを糖質で摂取することになります。

ただし、このケーススタディにあるような週1%の減量は限界のスピードと言って良いでしょう。無理なくとなるとこれの半分くらいが目安になると思います。

以上、述べてきたように除脂肪組織を維持したまま減量を試みると、結果として高タンパク・中脂質・低糖質の食事になります。低糖質だから減量に対して良い食事なのでは無く、必要な栄養素を考えると結果的に低糖質になってしまっただけです。ただし、運動して消費カロリーが増えれば糖質と脂質の摂取量を増やさなくてはならないので、それほど低糖質食にはなりません。

持久系競技のアスリートは練習量が多く、エネルギーの消費量も比例して多い場合がほとんどです。高タンパクの食事を心掛ければおおよそ大丈夫ではないかと思われます。

ガイドラインに従って様子を見て脂肪が落ちていれば継続。停滞し始めたら食事量や運動量を見直すと良いと思います。また、進捗を測るには体重だけではなく、写真に撮るといった見た目やメジャーを使用して各部位の太さを測るといったモノも併用すると良いでしょう。

まとめ

・減量幅は週に体重の0.5%を目安に限界でも1.0%。(急激な減量はダメ!)

・カロリー収支をマイナスにする。(一番重要)

・高タンパクの食事を心掛ける。(1日2.0g~/kg)

・オメガ3脂肪酸をなるべく摂る。

・炭水化物は必要な量をしっかり。

シーズンが始まる3月・4月に向けてしっかりと準備なさってください。それと、脂肪燃焼を促す低糖質トレーニングについては過去記事にまとめてありますのでこちらもご参考下さい

脂肪燃焼をうながす6つの方法~Train-Low~

参考文献

Murphy CH

Considerations for protein intake in managing weight loss in athletes.

Eur J Sports Sci, 2015;15(1):21-8. doi: 10.1080/17461391.2014.936325

Thomas R , Roger W

Essentials of Strength Training and Conditioning(3rd edition)

National Strength and Conditioning Association

タイトルとURLをコピーしました