新型コロナウィルスの影響でレースが軒並み中止になり、当初予定していたスケジュールを大幅に変えなければならない状況下で如何お過ごしでしょうか。
そういった状況でも熱心にトレーニングされている選手の皆さんには頭が下がります。ツイッター上で申し上げましたが、一旦お休みを入れてから再始動されるのがよろしいかと思います。
その際、今よりも成長するには徐々に負荷を上げていかなければなりません。どうやったら上手く行くか。その点について普段どんなことを考えながら私がコーチングを行っているか記したいと思います。
負荷を上げるとは
負荷を上げるとは、最終的には強度を上げるか量を増やすかの2択に行き着きます。それぞれ順にご案内いたします。
まずは強度を上げる方法について。例えば5×3分300Wを達成できたのならば、次は5×3分310Wを目標とする。その次は320Wを目指すといった具合です。非常に単純明快です。
難しく考える必要がありませんし日々成長している実感もあります。上手く行っている間は素晴らしいやり方ですが早晩限界を迎えます。頭打ちになってきた所からどうするか。次はそこに触れてみます。
Option1:部分的に強度を上げる
5×3分を行うとして一律に強度を増す必要はありません。例えば、3×3分300Wと2×3分310Wといった具合に一部の本数だけ強度を上げても構わない訳です。
2本310Wを完遂出来たのならば、次は3本にする、4本にする、5本全て310Wで行う。全て310Wで達成できれば次は320Wに挑戦するといった具合に段階的に強度を増していきましょう。
もしくは、本数ではなくある時間だけペースを上げるのも良い選択です。こちらの場合は合計3分間のうち2分間は300W。残り1分は310Wといった具合です。慣れてきたら310Wの時間を1分30秒にする、2分にする、3分全て310Wで行う。
頭を上げるのかお尻を上げるのか、それとも中間部分を上げるのか。他にも〇秒ごとにペースを変えるといった断続的な方法も考えられます。
個人的には頭とお尻を上げる場合が多いです。理由としては、Fast Startの方が主観的運動強度が低く高いパワーを保てたという研究もありますし、これで終わると思えると心情的に楽といった個人的経験則も含まれます。
どういったやり方がやり易いかは人それぞれです。実際に試してみてメニュー中の平均値が少しでも上がるように頑張ってみてください。
なおFast Startについて詳しく知りたい方は前回のブログをご参考ください。
Option2:トータルの量を増やす
それでは次に量の増やし方について。単純なのは3分だったものを4分にする。5分にする、6分・・・です。
他にも5×3分300Wを達成できたのならば次は6本行う。7本、8本行うといった方法も良いでしょう。
強度と同じく順調に伸びている間は問題ありません。しかし、時間も体力も有限であり何処かで限界に達します。具体的には、3分だったものを4分にすれば33%増ですし、5本行っていたものを6本にすれば20%増です。これだけ一気に増やすのは困難です。
どう対処したら良いか。基本的な考え方は強度と一緒です。ある特定の本数だけ時間を延ばす。具体的には2本だけ4分にして、残りの3本は3分のままといった具合です。
本数を増やす場合は6本目以降は2分で行う。もしくは(3×3分)+(5×2分)=合計19分といった具合に、本数を増やす代わりに1本の長さを短縮しても良いでしょう。合計で仕事量を稼ぐとお考えいただければよろしいかと思います。
ただし、ある程度の下限は存在いたします。高強度インターバルトレーニングにおいては90%VO2max以上の強度が有効であり、酸素摂取量が90%VO2maxに到達するのに1~2分くらい時間がかかると考えられております。余り短い時間に区切るのはよろしくないでしょう。レストを挟みながら1分FTP走を20本行っても20分FTP走と同じ効果を持つかどうかと考えればイメージし易いのではないでしょうか。
この点については過去のシーズンインに向けて準備はお済みですか?~高強度インターバルトレーニングのイロハ~で詳しく述べておりますので、よろしければご参考ください。
Option3:レストの設定を変える
メニューを考える際はついONに気が向きがちです。しかし、レストをどう過ごすかでメニュー全体の難易度や目的が変わります。
練習の負荷を増すのを目的とすればレスト中の強度を上げる。またはレストを短くするといった方法が考えられます。
レスト中の強度を上げるメリットとしては、完全OFFに比べて心拍数が下がらないのでより高い酸素摂取量を保つことが可能です。ONの時に強度を上げても高い心拍数を目指すことは可能ですが、同じ10Wでも300Wから10W上げるのと、150Wから10W上げるのでは難易度が異なります。ONを上げるのよりもやり易いと考えられます。
レスト時間を短くするメリットは強度と同じく心拍数を高く保てる点。他にも時間を短縮できるのと物理的なストレスを減らせる点もあります。
余り取り沙汰されませんが、レストとは言え走れば体力は消耗しますし骨格筋や腱といった局所に負担が掛かります。若干とはいえそれらを減らせるのはメリットと言えます。
なぜならば、レベルが高くなればなるほどやらなければならないことは増えます。それに対して練習時間にも体力にも限りがあります。そうなると出来る限り時間当たりの効率を上げ次の練習に備える必要性を考えなければなりません。
以上の理由から練習時間と体への物理的な負荷を減らせるレストを短縮するのは有効な選択肢の一つであると考えられます。必ずしも仕事量を増やさなくても負荷は上げられます。
終わりに
以上、ざっとですが負荷を上げる方法論について述べてみました。実際にメニューを組むとなると強度や量だけではなく、当日のコンディションや次のレースまでの期間。暑さや寒さといった外部環境にお仕事やご家庭の用事といった様々な要素を考える必要があります。
こうすれば上手く行くという絶対の方法は存在いたしませんが、守るべき原理や原則はあります。その中で特に重要なのが過負荷の原理と漸進性の原則だと考えております。その二つを守るのに今回のポストが役立てば幸いです。
先行きの見えない状況ですが、お体に気を付けて頑張ってください。
編集後記
キャンセルが出ましたのでPCG-Japanにおけるクライアント様を若干名募集しております。ご興味のある方はこちらの私のHPからか、PCG-Japanのサイトからお問い合わせください。