時間の無い人向け~オフシーズンにおけるスプリントトレーニングのススメ~

オフシーズンのトレーニングについて

前回のポストでオフシーズン中にどの程度のパフォーマンスを維持すべきか。あるいは下げても良いのかについて触れました。

今回もオフシーズンにおけるお話です。持久的スポーツにおいて走り込む重要さは今も昔も変わりません。

しかしながら、練習時間を十分確保できる人はむしろ少数派だと思います。ご家庭の用事やお仕事、個人的なお付き合いがある中で何とかやり繰りしているはずです。

少しでも時間効率の良いやり方ということで、オフシーズンに余り取り沙汰されないスプリントの有効性についてご紹介しようと思います。

可能ならばしかるべき練習時間を確保し低強度から高強度まで満遍なくやるのが望ましいです。それが出来ない方の次善の策として参考になれば幸いです。

研究の概要

・男性サイクリスト11名が対象。そのうち7名の最大酸素摂取量は>71ml/㎏/min。4名は65~71ml/kg/min。

・シーズン終了後、3週間の移行期間において64%練習量を削減した。その後、6週間モニタリングを行った。

・テスト実施は2回。シーズン終了時と、3週間の移行期間を終え6週間の準備期間終了時。

・移行期間において、60%VO2maxといった低強度のトレーニングのみを課した群(CON)と、低強度のトレーニングにプラスして週1回3×30秒全力スプリント。レスト4分を課した群(SPR)との比較。具体的な量は下記を参照。

結果

・SPR群は20分オールアウト時のパワーウェイトレシオが7.0%の改善を示し、CON群の-1.4%よりも大きかった。

・SPR群は30秒スプリントにおいて1.2%の改善を示したのに対し、CON群では-4.7%の低下が見られた。詳しくは下記の図を参照。

私見

シーズン終了後の移行期間においてスプリントを行った群は、低強度のみの群に比べて20分オールアウト時のパワーや最大酸素摂取量が向上した。そして、低強度のみだと低下した30秒全力走時のパワーを維持できたというものです。

それだけ聞くと非常に有効と考えられます。注意しなければならないのはその後の6週間に渡る準備期間を含めている点です。

移行期間中にスプリントを行ったことが、記載されている能力の維持・向上を直接的に生じさせたと言えるものではないことを理解する必要はあります。

しかし、お休み期間中だからといって単に流すだけよりも、3×30秒といったスプリントを行っておくと能力の維持にある程度寄与する。結果としてトレーニングの再開がスムーズにいくのかなと個人的には感じます。

完全オフ中の過ごし方としてそのまま使用しても良いですし、シーズン中のテーパリングや時間が無くてまともにトレーニングが出来ない時に考え方を応用できそうです。

最後に注意点を申し上げておくと、あくまで20分オールアウト時や30秒スプリント時のパワーが維持・向上しただけという点です。それはあらゆる能力が維持・向上したことを意味しません。

以前のポスト(低強度と高強度の一致点と相違点~主に血流能力において~)でご紹介した通り、高強度と低強度では向上する能力も機序も異なります。出来ればしっかり練習時間を確保し、満遍なく行うことが理想であるとお考えください。

今回のポストが冬場の指針になれば幸いです。

編集後記

前回のポストでご案内した通り、クライアント様を引き続き募集しております。来シーズンに向けて頑張ろうとお考えの方は是非ご相談ください。

通年のコーチングはちょっとという方には、単発で行えるコンサルティング業務も承っております。よろしくご検討ください。

参考文献

Taylor M

The Inclusion of Sprints in Low-Intensity Sessions During the Transition Period of Elite Cyclists Improves Endurance Performance 6 Weeks Into the Subsequent Preparatory Period

Int J Sports Physiol Perform. 2021 Oct 1;16(10):1502-1509.

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