6月9日(日本時間)、野球の大谷選手が故障者リストに入ったと報道がありました。それを受けてタレントの武井壮さんが下記のようなツイートをされていらっしゃいます。
まず、大谷選手が故障者リストに入った原因がボールの変化によるかは分かりません。あくまで武井さんの感想に過ぎないという事を踏まえておく必要があります。しかし、鋭いことを言うなと感じましたので思う所を述べてみます。
何が鋭いかというと
「ボールが変わったら同じ投球でももう違う運動だってこと」
この部分です。
物理を学んだことのある方ならば創造に難くないと思いますが、末端部分の重さや大きさ、材質が変化すれば見た目が同じでも全く異なるタイミングで異なる力が必要になります。武井さんがおっしゃる通り違う運動と言えます。
そして、その変化した分の負荷を受けるのは人間の関節であり、筋肉であり、腱です。その負荷に耐えられなければ怪我という事態を招きかねません。このように普段とは違う物を使用するのはリスクの高い行為であると知っておくべきです。
競技動作に負荷を加えたエクササイズについて
ここからは私の言いたい点です。
世の中には、競技動作に近い動き(競技動作そのもの)に重りを加えたエクササイズが有効であると主張する方が大勢いらっしゃいます。それは本当なのでしょうか。
彼(彼女)らの主張では競技と筋トレは別の動きである。スクワットの重量が増したところで競技が上手くなる訳ではない。だからこそ、競技に近い動きに負荷を加えれば競技動作そのモノの向上や、筋力の向上が見込めるので有効であると言います。
確かに、スクワットの重量が増しても競技が上手くなる訳ではありません。この点に関してはその通りだと思います。あくまで発揮できる筋力が向上しただけであり、獲得した筋力を競技の動きに適応させるには相応の競技練習が必要です。
その時間を短縮するために競技動作に負荷を加えれば良いというのは短絡的です。上記で説明したように、ある部分の重さや大きさが変われば全く異なる運動になります。結果として怪我のリスクが増し、異なるタイミングでの力発揮を余儀なくされます。競技動作が向上するどころか、むしろ不適切な体の使い方を学習させられます。
それでは怪我のリスクを抑えるために、安全に行えるレベルに負荷を下げた場合どうなるか。多くの文献で筋力の向上には1RMの85%を超えるような高い負荷が有効であると示唆されております。従って、競技に近い動きでも安全に行えるレベルに負荷を下げた場合、筋力の向上という目的を達成できるか疑問が残ります。
競技練習では補えない部分(筋力や柔軟性)を鍛えるために補助的なエクササイズを取り入れたのに、その目的を達成できない可能性があります。何のために補助的なエクササイズを取り入れたのかこれでは分かりません。
まとめ
以上述べてきたように、競技動作に近い動き(競技動作そのもの)に負荷を掛けるエクササイズは、怪我のリスクを増し、不適切な体の使い方を学習させられ、筋力の向上に役立つか疑問が残るモノと思われます。
従って、競技力向上のために補助的なトレーニングを行う場合は、あくまで補助と割り切り筋力や柔軟性の向上に最適なモノを選択するべきです。
そうなると、いわゆるBIG3と呼ばれるようなベーシックなエクササイズを中心に筋トレを行い、それで獲得した筋力や柔軟性を十分発揮出来るように競技練習を命一杯行うのが最も効率が良いと考えています。
なお、ベーシックなエクササイズを行うのが有効であるというのは過去のポストをご覧ください。
時間も体力もやる気も有限です。見た目に騙されず、何が自分のパフォーマンスを向上させてくれるかよく考えて選択して下さることを願っております。