我ながらキャッチーなタイトルを付けてしまった訳ですが、皆さんワークアウト中にどんな事を考えながらエクササイズを行っていらっしゃいますか?ペダルに力を込めるのに集中する人もいるでしょうし、何処の筋肉を使っているのか意識しながらの人、とにかく速く走る事を考えながらの人もいるでしょう。
研究の世界だとそれぞれを注意の外的焦点化・内的焦点化・非焦点化といいます。この注意の焦点化がパフォーマンスにどう影響するのかが本日のテーマです。
まずは言葉の意味をご案内いたします。
「外的焦点化」・・・自分の身体の動作が環境に及ぼす影響(動作結果)に向けられるもの。
(例)地面を押せ。スターティングブロックから爆発的に飛び出せ。
「内的焦点化」・・・自分の身体の動き(動作過程)にむけられるもの。
(例)臀筋を意識して踏め。一方の足で踏み込んだら素早く引き戻し、もう片方は出来るだけ前に振り出せ。
「非焦点化」・・・注意が外部にも内部にも向かわず、意識を集中しようとする試みがなされないもの。
(例)出来る限り速く走れ。
どの方法でも速く走るためという求める結果は同じです。しかし、注意の焦点化のタイプによって果たす役割が異なる事を示す研究結果が報告されています。
例えばPorterの研究によると、低スキルのスプリンターを外的焦点化群、内的焦点化群、そして非焦点化群に分けて20mのスプリントをさせる実験を行った。
結果として外的焦点化群は平均3.75秒。内的焦点化群と非焦点化群は平均3.87秒と、外的焦点化群が有意に優れたタイムを出した。筆者は注意の外的焦点化が運動能力の学習とパフォーマンスを向上させると述べています。
こういった注意の焦点化が競技パフォーマンスに及ぼす影響は「運動制約仮説」という考えで説明されております。
それによると、注意を外部に向けると、反射的に動作を生じさせる無意識の自動的なプロセスによって運動制御系が機能し、結果としてより優れたパフォーマンスを発揮する。
これに対して、注意が内部に向けられると、運動制御系が意識的に調整されたプロセス(明確な監視下)によって機能するため、ワーキングメモリが作動して運動系が制約される。結果として、外的焦点化と比較するとパフォーマンスを低下させると考えられています。
それでは、外部に注意を向けるのがパフォーマンスにとって有益であるとして、それだけやれば良いかというとそうとも言えないと思います。
例えば、ある部位を集中して鍛えたい。もしくは、今までとは異なる身体の使い方を試したいという場合には内的焦点化の方が有効でしょう。なぜならば、内的焦点化によって対象となる筋群の筋電図活動が高まるのは研究によって示唆されております。
実際問題どうするべきかと問われれば目的と状況によるとしか言えません・・・
ただコーチングを受け持っている方には、前半は臀筋を意識して△△と指示を出し、後半はペダルに足を叩き付けるように!といった具合に両方やるような事が多いです。そして、レースが近くなってくると外部に注意を促すような指示の割合が増えます。
自転車仲間と話をしていると、どちらかというと身体の内部に注意を向けている場合が多いような気がします。こういったやり方もあるよと知っておくとよりトレーニングに幅が出ると思いますのでお試し下さい。
参考文献
Benz A
Coaching Instructions and Cues for Enhancing Sprint Performance
Strength & Conditioning Journal: February 2016 – Volume 38 – Issue 1 – p 1–11
Porter JM
Adopting an external focus of attention improves sprinting performance in low-skilled sprinters.
J Strength Cond Res 29: 947–953, 2015
Schoenfeld BJ
Attentional Focus for Maximizing Muscle Development: The Mind-Muscle Connection
Strength & Conditioning Journal Japan Volume 23 Number 6 July 2016