ゆっくり走って本当に速くなれるの?

トレーニング

ゆっくり走って速くなるという謳い文句を良く見聞きします。

私個人は速くなりたければ速く走るしかないと硬く信じている訳ですが、実際の所どうなのかを科学的知見を基にお話ししたいと思います。

 

Helgerudが興味深い研究を発表しておりますので紹介したいと思います。

 

概要

・55名の男性被験者を対象とした研究。そのうち13名が怪我や病気により途中離脱。2名がトレーニングの達成率90%未満のため除外。合計40名が対象。

・被験者の平均年齢25歳。平均VO2max58ml/kg/minの大学生を4つのグループに分け、下記のトレーニングを週3回、8週間課した

 

1、LSD(70%HRmax)で45分間の持続走

2、LT(85%HRmax)で24~25分間の持続走

3、15/15(15秒90~95%HRmax/15秒70%HRmax)を47レップ

4、4×4(4分90~95%HRmax/3分70%HRmax)を4レップ

 

結果

1、LSD   VO2max55.8±6.6→56.8±6.3(+1.7%)

2、LT   VO2max59.6±7.6→60.8±7.1(+2.0%)

3、15/15 VO2max60.5±5.4→64.4±4.4(+5.5%)

4、4×4  VO2max55.5±7.4→60.4±7.3(+7.3%)

被験者の平均VO2maxに差があるので、VO2maxの増加率だけを見て4×4分が最も優れているとは言い難いです。

 

しかし、低~中強度のトレーニングに対して15/15・4×4といったHRmax90%以上のトレーニングの向上率が目立つのは間違いありません。有酸素能力を向上させるには低~中強度での長時間トレーニングが有効な手段と考えられていましたが、この研究から8週間という短い期間においては必ずしもそうではないと言えそうです。

 

また、低~中強度のトレーニングを大量に行っても、高強度のトレーニングとは互換性が無いという事も示唆しております。実際問題、LT領域までのトレーニングだけだとあるレベルから頭打ちを感じます。

 

さらに、VO2max以上のトレーニングをしないとアタック等のペースアップに付いて行けません。だからと言って高強度のトレーニングばかりやれば良いかというと、それは早計と思われます。

 

被験者の平均VO2maxは58ml/kg/min。

 

American College of Sports Medicine(1995)によると51以上は全体の10%未満であり、59以上になると1%未満です。この実験の被験者は相当な有酸素能力をすでに有しているので、高強度のトレーニングに耐え効果が得られた可能性が十分にあります。

 

個人的な見解ですが、FTP3.8~4.0w/kg位からは高い強度のトレーニングを積極的に取り入れて行くと良いのではないかなと考えております。根拠は?と言われると「It´s my experience」となってしまうのですが・・・

 

結論としては、ゆっくり走っていてもそこそこ速くなるけれども、あるレベルに達したら速やかに高強度のトレーニングに移行すべきです。具体的な内容はご自身の競技歴や能力、状況と合わせて考えて頂ければと思います。

 

参考文献

Helgerud J

Aerobic High-Intensity Intervals Improve V ˙O2max More Than Moderate Training

Med Sci Sports Exerc.2007 Apr;39(4):665-71

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