先日、非常に興味深い研究を見かけましたので当初予定していた内容とは異なるポストを行います。
原著はコチラです。
Influence of Interval Training Frequency on Time-Trial Performance in Elite Endurance Athletes
今回ご紹介する論文は、エリートレベルの持久系アスリートに対しインターバルを週2回行う群と週4回行う群で比較した場合にどうなったかという内容です。
トレーニングに関する研究は日進月歩ですが、どれくらいの量をどのくらいの頻度でインターバルを行うのが適切なのかは依然として不明です。今回のポストがトレーニングを組み立てる際の一助になれば幸いです。
概要
・合計20名の男女クロスカントリースキーヤー、バイアスロンの選手が対象
・対象を週に2回インターバルを行うLF群(low-frequency group)と、週に4回インターバルを行うHF群(high-frequency group)に分けた
・LF群の平均VO2maxは70.7ml/min/kg。HF群の平均VO2maxは67.8ml/min/kg
・12週間に渡るトレーニング介入
・LF群が行ったトレーニング内容は下記の通り。1日は8×8分82-87%HRmax、2分レスト。もう1日は6×12分55-72%HRmax、3分レスト。
HF群が行ったトレーニングは2日間4×8分82-87%HRmax、2分レスト。残り2日間は3×12分55-72%HRmax、3分レスト。
LF群で行った内容を2分割したものがHF群である。両群間にトレーニングの量・強度に有意差は無かった。
結果
・LF群では体調不良により1名脱落。HF群では研究とは異なる原因による事故で1名脱落。そして体調不良によって3名脱落の合計16名での報告
・両群共にVO2maxにおいて有意な変化は見られなかった
・8㎞タイムトライアルと最大下運動時における酸素摂取量、exercise economy(ランニングエコノミーと同義と思われる)はLF群においてのみ有意に向上した。
私見
VO2maxに変化は見られませんでしたが、週に2回行うLF群の方が持久的パフォーマンスにおいて優れた成果を見せたという内容です。
こうなった原因については幾つか仮説を立てられます。
1、1回で大量の刺激を与えた方が有効である
2、能力の向上を引き出すには強度・量共に下限が存在する
3、高頻度だと回復や適応が追い付かずパフォーマンスを発揮出来なかった
1に関してはHF群と比較してLF群では1日の量が倍になります。一度に大量の刺激を加えることが毛細血管の増加や配置の適正化、ミトコンドリアの増加や質の改善に繋がったのではないかと考えられます。
2に関しては平均VO2maxが70ml/kg/minに達するようなハイレベルの選手が対象だと刺激が十分ではなかった可能性があります。
このレベルに達するとすでに有酸素能力が生理的限界値に近い可能性が十分にあり得ます。そういった選手に対して、パワーゾーンで示せば恐らくSSTからFTP程度の強度で1日に合計32~36分間では物足りなかったのだろうと考えられます。
3に関しては言葉の通りです。被験者のような高いレベルの選手でも、週に4日インターバルを行うと回復と適応が追い付かなかった可能性が考えられます。地面からの衝撃といった運動強度以外の刺激があるような競技の場合は特に注意が必要でしょう。
他にも注意点としては脱落率の高さです。たまたま偶然ならば良いのですが、HF群では10名中3名が体調不良によって統計から外されております。
回復と適応が追い付かなかったことを示す可能性があるので頭に入れておいた方が良いでしょう。
まとめ
週に4回と分割して行うよりも、週に2回集中して行う方が有効だったという研究の紹介でした。
鍛えられていないうちはどんな内容でもやりさえすれば能力は向上します。しかし、レベルが上がるごとに必要な刺激は増えていきます。自分なりにトレーニングを積み上げて来たけれども上手く成長できなくなってきたと感じていたら、今まで以上に「選択と集中」をお考えください。
それを考える際に、今回の研究でVO2maxが70近くに達する選手においても82~87%HRmaxという中強度でも1日に60分超行えば能力の向上が見込めると示唆されたのは目安になります。
しかしながら、時間的制約やトレーニングの環境によって理想的なサイクルを回すのは難しいと思われます。
その場合、低~中強度では余り能力の向上を見込めないと解釈してトレーニングを組み立てるのもありだと思います。他にも、高頻度でインターバルを行うのは避けた方が良いと考えても良いでしょう。
研究でこれが有効と示唆されたとしてもそれをそのまま取り入れる必要はありません。あくまでご自身の能力や置かれている状況に合わせて科学的知見をご利用なさってください。
編集後記
現在もクライアントの方を募集しております。
新型コロナウィルスの影響でレースが中止になり、モチベーションを保つのが難しい状況下だと思います。それでもなお頑張ってみたいという方がいらっしゃれば是非お問い合わせください。
参考文献
Espen Tønnessen
Influence of Interval Training Frequency on Time-Trial Performance in Elite Endurance Athletes
Int. J. Environ. Res. Public Health May 4;17(9). pii: E3190. doi: 10.3390/ijerph17093190.