持久系スポーツを行っていれば、高強度インターバルトレーニングという言葉を何処かで聞いた事があると思います。言葉としては知っていても、どういったものか学ぶ機会はそれほど無いと思われます。今回は、セミナーで使用する資料を一部公開する形で言葉の定義やどういう具合に考えるものなのか述べてみます。
言葉の定義
高強度インターバルトレーニング(High-Intensity Interval Training=HIIT or HIT)とは、研究の世界ではVO2max90%以上の強度でのトレーニングを休憩を挟みながら繰り返す事を意味します。この文章でHIITと言ったらこれを指します。
それではなぜHIITを行うのかというと、VO2maxを向上させるにはVO2max相当の強度、またはそれに近い強度でのトレーニングを出来るだけ長い時間行うのが有効である。そして、高強度の時間を長くするためには、一定ペースで長時間強度を維持するよりも、途中に休憩を挟むインターバル形式を取り入れた方が結果的に長く出来るのではないかという考えに基づいています。
(例)1×5分よりも2×3分の方が長い
HIITを構成する要素
それではHIITを構成する要素について述べてみます。結論から言えば次に挙げる12個の要素によって成り立ちます。
・ワークアウトの強度
・ワークアウトの長さ
・レスト中の強度
・レストの長さ
・本数
・セット間の強度
・セット間の長さ
・セット数
・運動様式
・路面の状況(硬さ等)
・外部環境(暑さや標高)
・栄養状態(筋グリコーゲンの貯蔵量等)
これらの要素を調整してVO2max相当の時間を如何に延ばすか?それは目的や鍛錬度、使える時間といったモノと相談しながら決定する必要があります。
HIITを行う際の注意点
図をご覧ください。
運動を開始しても、すぐに酸素摂取量がVO2max相当になる訳ではありません。強度によりますが運動開始から大体1~2分位は掛かります。5分行ったからといって5分そのものがVO2max相当とは言えない事になります。
上記2点を踏まえた上で、どうすればVO2max相当の時間を長く出来るのかざっと4つご紹介します。
1、比較的低強度で持続時間を延ばす
2、より高い強度でスタートしVO2maxに到達する時間を短くする
3、レスト時間を短くする
4、レスト中の強度を上げる
1、比較的低強度で持続時間を延ばす
5×6分といった長い時間のワークアウトです。オーソドックスなやり方で、酸素摂取量がVO2max相当になるのに1~2分掛かるならば、その分継続時間を長くしようという方法です。昔から行われていて効果が実証されていると言って良いでしょう。
2、より高い強度でスタートしVO2maxに到達する時間を短くする
運動開始時の強度を上げてVO2max相当に達するまでの時間を短縮する方法です。
(例)4×4分VO2max(FTP106-120%)
ただし、最初の1分はアネロビック(FTP121-150%)で!
といった形です。
3、レスト時間を短くする
40秒/20秒とか、2分/1分、4分/2分と言ったONに比べてOFFを短くする方法です。OFFが短くなる分心拍数が下がらないので、高い心拍数の滞留時間が伸びます。最近はこういったやり方が流行りですね。
4、レスト中の強度を上げる
完全休息ではなくアクティブリカバリーにする。3と同様に心拍数を下げない方法です。
(例)5×3分VO2max(FTP106-120%)
レスト3分。ただしレスト中もテンポ(FTP76-90%)を維持しよう
といった形です。
1と2は高強度の時間を出来る限り延ばすという考え方。
3と4はなるべく強度を下げず、心拍数が落ちないようにするという考え方と言って良いかもしれません。
こういった基本的な考え方を基にしながら、解糖系のエネルギーの割合をどうするかとか、神経系・骨格筋への負荷、その後のトレーニングといった様々な点を考慮しながらワークアウトを組み立てると良いでしょう。
いきなり全てを把握するのは難しいと思います。取り合えず今まで通りのワークアウトに、強度だけとか時間だけをいじってみるのをお勧めします。それだけでも随分変わります。色々試しながら自分にとって最適なワークアウトを見つけ出して下さい。
なお今回のブログ記事よりもはるかに詳しく高強度インターバルトレーニングについてご案内するセミナーを2月3日(土)13:00~行います。まだお席が御座いますので皆さまお誘いあわせのうえ是非お越しください。
2月3日(土)セミナー「持久系競技における高強度インターバルトレーニングについて」
参考文献
Buchheit M、Laursen PB
High-Intensity interval training, Solutions to the programming puzzle,Part I: Cardiopulmonary emphasis
Sports Med 2013 May;43(5):313-38
Murgatroyd SR
Pulmonary O-2 uptake kinetics as a determinant of high-intensity exercise tolerance in humans
J Appl Physiol 2011 Mar;110(6):1598-606