サイクリストのためのクランク長ガイド~ショートクランクは有効な選択肢なのか?~

トレーニング

ポガチャル選手を筆頭に、相対的に短いクランクを導入する選手がおり昨今注目されているなと感じています。その理由について、上死点が低くなるのでエアロポジションが取り易いとか、ケイデンスを上げ易いとか様々な予測・推測がなされております。

実際の所、どうなのかについて面白い論文を先日読んだので、それを基にまとめてみたいと思います。論文名は下記です。

The impact of minor crank length adjustments on lower body cycling kinematics

論文の概要

・14名のアマチュアサイクリストが対象(男性9名、女性5名)

・各々の推奨クランク長(165.0~172.5㎜)と±5㎜、±10㎜の5種類のクランクを使用

・運動強度はRPE(主観的運動強度)を使用

・RPE11で1分間。RPE14で4分間の合計5分間を5種類のクランクで行う。セット間のレストは5分

結果

・クランク長に関わらず、RPE14におけるパワーおよびケイデンスに変化は無かった

 

・クランク長が短いほど骨盤の前傾が顕著になった

・クランク長が長いほど股関節屈曲が有意に増加し、外転も増加した

・クランク長が長いほど膝関節屈曲が大きくなった。また、クランク長が長いほど股関節の内旋が大きくなった

結果に対する私見

余り鍛錬度の高くない選手が対象なので高いレベルの選手に対しては何とも言えませんが、まず注目したのはクランク長を ±5~10㎜ 変化させても発揮できるパワーに大きな変化は無さそうです。

これは、同様に狭い範囲のクランク長(推奨値±5㎜)を用いた先行研究(Ferrer-Roca et al., Citation2017)からも示唆されています。従って、クランク長がパワーに与える影響は思ったより小さいと言えそうです。

個人的な皮膚感覚としては、10㎜違うと違和感を感じそうですが、5㎜くらいならば慣れれば確かに問題無いかなと感じます。

続きまして、クランク長が長いと股関節の屈曲・内旋・外転が大きくなるし、膝関節の屈曲も大きくなりました。さらに、骨盤を後傾させがちの模様です。

これらについては、クランク長が長いと上死点が高くなるので、それを越すためには股関節と膝関節を大きく屈曲させる必要がある。それで足りない分は膝を内に入れて補っているのかと思われます。

外転に関しては、上死点が高くなったり下死点が低くなったりするのを、骨盤を左右に傾けることで対処しているのかと予想しています。

そして骨盤の後傾に関しては、上死点が高くなるので膝とお腹との距離が狭くなり、前傾させるのが難しくなるのかと考えております。

他には、骨盤が後傾すると腰椎に負担が掛かりそうですし、膝関節の屈曲が大きくなれば膝蓋骨や膝蓋腱への圧縮力も理屈上増します。腰痛や膝痛にお悩みの方も検討してみてよろしいかと思います。

こういったペダリングの変化に関しては、多くの方が予測していたことであり余り目新しいことは無いかもしれません。しかしながら、その当たり前のことを実際にどれくらい変化するか確認したというのは大きいと考えております。

先ほど申し上げた通り、パワーに関しては余り影響が無い模様です。パワーを犠牲にせず空力を期待して前傾姿勢を取りたい方や、ポジションを出すのに苦戦されている方は検討してもよろしいかと思います。

今まではサドルやクリート位置で対応していた問題を、クランク長で対処するという選択肢があることを明確にした報告と言っても良いかもしれません。

注意点として、この研究においてはサドル位置を調整していない模様です。クランク長を変更すればサドルやハンドル、クリート位置等も調整するのが一般的です。その点を考慮すると報告通りとは行かないかもしれません。

また、子供用の自転車を大人が乗っても上手く乗れない様に、長くするにせよ短くするにせよ何処かで許容範囲を超えるはずです。短くすればするほど良いという訳では恐らくありません。それらについてはご注意ください。

参考文献

Reynolds Sian

The impact of minor crank length adjustments on lower body cycling kinematics

Sports Biomech. 2026 Mar;25(3):454-467. doi: 10.1080/14763141.2025.2511755.

Ferrer-Roca Ventura

Acute effects of small changes in crank length on gross efficiency and pedalling technique during submaximal cycling

J Sports Sci. 2017 Jul;35(14):1328-1335. doi: 10.1080/02640414.2016.1215490.

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