伝統的なピリオダイゼーションと現在について

トレーニング

11月も半ばを過ぎ、CXをメインにされている方を除けばオフシーズンを満喫しているのではないかと思われます。シーズン中のプレッシャーや節制から解き放たれ、楽しく自転車に乗っていられる幸せな時期と言えます。

 

そこで一旦リフレッシュを終えたら来シーズンに向けてどうしようかなと考え、大まかなロードマップを作る時期でもあります。

 

本日はトレーニングについて勉強していれば一度は聞いたことのあるであろうピリオダイゼーションについてお話ししてみたいと思います。

 

伝統的なピリオダイゼーションについて

 

私の知る限りだとピリオダイゼーションという言葉が広まり始めたのは1960年代においてMatveyev氏が提唱してからです。それ以降、計画的かつ秩序だった方法論として世界的に広まり現在に至ります。

 

ピリオダイゼーションを簡便にご案内すると、長期的なトレーニング期間において同じことをやり続けるのではなく、幾つかの期間に分けそれぞれの目的に合致したプログラムを行い、最終的な目標を達成させるための考え方と言えます。

 

一般的には1年といった長期間をマクロサイクル。4~8週間といった中期間のメゾサイクル(人によって2~4週だったりもします)。1週間、またはその日1日といった短期間をミクロサイクルと設定し、それぞれを組み立てていきます。

 

この中期間のメゾサイクルをどうするかが特徴的です。3つに分けたり4つに分けたり、さらに細かく分類することもありますが最も単純なのは下記の通りです。

 

・準備期→試合期→移行期

 

移行期と呼ばれる部分がいわゆるオフシーズンです。休養と基礎的な訓練を中心に行います。持久系スポーツで言えば低強度で長時間のトレーニングやスキル練習が該当します。

 

準備期は試合に向けて高い強度での割合が増えます。試合期はさらに専門的なトレーニングと試合に向けた調整といった具合です。

 

非常にスッキリしておりますし、理に適っていると感じられます。しかし、この考え方には問題点が存在いたします。次はそれについて触れてみたいと思います。

 

伝統的なピリオダイゼーションの問題点

 

問題点の1つ目はやらないでいる能力は衰えるという点です。例えば、移行期で低強度・長時間のトレーニングばかり行っていたとします。そうなると高強度のトレーニングで培われるスプリント能力や最大酸素摂取量等は下がる可能性が高いです。

 

同じように試合期で高強度のトレーニングや、実践形式のトレーニングばかり行えば低強度で培われるような能力は下がり易いと考えられます。

 

競技を始めたばかりのうちは余り気にしなくても問題になりません。少ない刺激でも成長するので気の向くままに走っているだけで全ての能力が向上いたします。しかし、ある程度の能力に達したらそうはいきません。

 

上記の問題を解決するにはひたすら量を増大させるという方法があります。これが2つ目の問題を引き起こします。

 

例えば、移行期において週10時間低強度を行っていた。準備期になったら10時間の低強度に加えて4時間の中強度を上乗せする。試合が近くなれば2時間の高強度をさらに追加するといった具合です。

 

このやり方でも自分自身のキャパが許容する範囲であれば何とかなりますが、高いレベルになるほど必要な量は増えます。ひたすら練習量を増大させる必要が生じどこかで必ず破綻します。時間も体力も有限です。

 

また、過去に比べてシーズンが長期化し、試合に出れるコンディションを常に保つ必要性が増しております。そういった問題点にも対応し辛いと考えられます。

 

伝統的なピリオダイゼーションに代わる考え方

 

伝統的なピリオダイゼーションにおける問題や限界についてお話ししました。それらを解決するために低強度から高強度まで通年通して行うのが当世風です。

 

それではシーズンを区分けしないのかと言えばそういう訳ではありません。低強度から高強度まで行うけれども、時期に応じて割合を変えます。

 

例えば、移行期において高強度は週に1回。残りは低強度・長時間といった基礎的な内容。準備期や試合期だと高強度を週に2~3回行うのに対して、低強度・長時間は週に1~2回で維持する程度に留めるといった具合です。

 

ご存知の通り能力を向上させるには多大な労力を必要としますし落ちるのは一瞬です。しかし、維持するのは比較的容易なのが分かっています。

 

Rønnestad(2014)によれば、7~10日に1回高強度を行えば最大酸素摂取量を維持・向上させることが出来たという報告があります。他にも、強度さえ保てば最大15週間持久的なパフォーマンスを維持出来たというSpiering(2021)の報告もあります。

 

クリアするべき課題に注力しながら、他の能力も落とさない程度に行っておくといった考え方をしていただくとよろしいかと思います。

 

まとめ

 

伝統的なピリオダイゼーションには能力の低下や練習量をひたすら増大させなければならないといった問題点や限界があることをご案内しました。そして、それらを解決するため通年通して万遍無くやるような当世風の考え方をご紹介いたしました。

 

ピリオダイゼーションは50年以上前に考え出されたものです。当時よりも競技レベルが向上し、選手に求められる能力や仕事量はずっと増しております。それに合わせて考え方もアップデートしていく必要があります。

 

しかし、根っこの部分はほとんど変わりません。新しい考え方が発表されるとそれを正しいモノとして古いモノを否定したりしますが、過去の研究の上に今があります。

 

過去の知見で必要な要素を残しながら現在に応用したいものです。今回のポストが参考になれば幸いです。

 

参考文献

 

Rønnestad BR

HIT maintains performance during the transition period and improves next season performance in well-trained cyclists.

Eur J Appl Physiol.2014 Sep;114(9):1831-9.

 

Spiering B A

Maintaining Physical Performance: The Minimal Dose of Exercise Needed to Preserve Endurance and Strength Over Time

J Strength Cond Res.2021 May 1;35(5):1449-1458.

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