いよいよ3月になりました。今年は新型コロナウィルスの問題があり中止になるレースが多々ありますが、例年ならばそろそろシーズン開幕の頃合いです。
長いようで短いオフシーズンの最終盤であり、レースに即した強度でのトレーニングを本格的に行っているものと思われます。
私自身もクライアントの方に対して、いわゆる高強度インターバルトレーニング(HIIT)というものをメインにワークアウトを作成しております。
このHIITについては様々な研究があり、皆さんもどういう具合にやるのかといった話を何処かで耳にしていると思います。
その内容について私が見聞きする限りでは強度や時間、本数についてが大半です。〇分を△%の負荷で□本といった具合です。本日は少し異なる視点であるHIITにおけるペース戦略についてお話しいたします。
参考とする研究はコチラです。
Increasing Oxygen Uptake in Well-Trained Cross-Country Skiers During Work Intervals With a Fast Start
概要
・VO2max 70.6±5.7/mL/min/kg のよく訓練されたクロスカントリースキーヤー11名が対象
・最初に身体能力及び負荷を確認するテスト1回を含む計5回のトレーニング介入
・HIITセッションのプロトコルは下記の通り。
4回のうち2回は、1.5分100%MAS(maximum aerobic speed)+3.5分85%MAS。3分レストというやり方。こちらのやり方はfast start and declining speed (DEC)と呼称。
4回のうち2回は、5分90%MAS。3分レストというやり方で行った(TRAD)
なお、セッション中の平均速度は両群ともほぼ変わらない。
・HIITセッションの前後にレッグプレスを用いて下肢筋群のピークパワーを測定した
結果
・TRAD群に比べてDEC群の方がセッション中の最大酸素摂取量、及び平均値が高かった
・TRAD群に比べてDEC群の方がセッション中の主観的運動強度が低かった
・平均心拍数、血中乳酸濃度、レッグプレスのピークパワーにおいては有意差無し
雑感
VO2maxを向上させるには>90%VO2maxの時間を大量に確保することが有効であると考えられており、それを最適化するにはどうすればよいのかを研究した内容です。
試行回数が各2回と急性の応答についてです。2回だと偶然かもしれませんし長期的な影響については何とも言えません。そして、コントロール群をおいていないのでテストやプロトコルに対する慣れが良い影響を与えてしまっている可能性も考えられます。
他にも、強度が上がると指数関数的に体への負担は増大するので、平均速度が同じでもその後のダメージについてはどうだろうと考慮しなければならない所のある研究ではありますが、それを差し引いても面白い内容だなと思います。
おさらいしてみると、最初にペースを上げて走ることで>90%VO2maxへの到達時間を短縮する。心拍数は負荷の後追いなので、その後ペースを落としても高い状態を維持できる。結果として、一定ペースで走るよりも酸素摂取量のピーク値および平均値が高かった。それにも関わらず主観的運動強度は低かったというものです。
この主観的運動強度が低いにも関わらず酸素摂取量を稼げたというのは大きいと感じます。やったことのある方ならばご存じとは思いますがHIITはキツイです。
それを少しでも和らげることが出来るのならば選択肢として十分ありだろうと思われます。特にペースで走るのが苦手な方や、アネロビックな領域は強いけれども持久的な能力に難のある人に向いているのではないでしょうか。
他にも、レースを模したインターバルのように最初にドカンとペースアップを図るようなメニューの有効性を裏付けることも出来ます。
個人的には以前ポストした「シーズンインに向けて準備はお済みですか?~高強度インターバルトレーニングのイロハ~」を支持する研究結果であり、自信をもってクライアントの方に提示できるので助かっております。
シーズン開幕まで間近です。残り少ない期間で焦りがあるかもしれませんが、皆さんも余り四角四面にならず自由な発想でトレーニングを楽しんでいただければと思います。
編集後記
パワーメーターを利用したトレーニングをご希望の方へ。
先着2名様ほど募集いたします。
PCG-Japanのサイトがリニューアル中でリンクが切れてしまっておりますので、このポストをご覧の方は下記のお問い合わせからご連絡願います。
参考文献
Rønnestad BR
Increasing Oxygen Uptake in Well-Trained Cross-Country Skiers During Work Intervals With a Fast Start.
Int J Sports Physiol Perform.2019 Oct 15:1-7. doi: 10.1123/ijspp.2018-0360.